増加著しい虐待の通報件数 賃貸住宅オーナーも入居者も通報は国民の義務(2/3ページ)
朝倉 継道
2021/10/06
異常を感じたら躊躇なく通報を
私は以前から、機会あるごとに、賃貸住宅オーナーや賃貸住宅に住む人は、児童虐待には特に敏感であってほしい旨を訴えている。
統計は出ていないと思われるが、数ある事例を見てもうっすらと分かるように、賃貸マンションや賃貸アパートは、おそらく児童虐待の現場になりやすい。反面、これらにあっては、構造上虐待の事実が周囲に漏れやすい。
オーナーや入居者は、少しでも異常に気付いた場合は、逡巡せず、躊躇なく、関係機関へ通報するべきだ。もっとも、最近は、実際に躊躇せず通報する人が増えたため、逆にストレスを抱える親が少なくないとも聞く。
子どもが癇癪を起こし、激しく泣くなどしたことで、近隣の住人がこれを通報、警察官などが駆け付け、そのことでショックを受ける親御さんも多い。
しかしながら、そうした親御さんには気の毒なことだが、その問題は、児童虐待から子どもを救うべき社会的課題とは別に切り分けた方がいい。
「警察官や児童相談所の職員が真剣な面持ちで家に現れた。ご近所の手前、恥ずかしい思いをした」「子どもの身体に虐待の跡がないかを調べられた。親として失格なのではと、自分を責めた」、そんな状況はたしかにつらいものとは思うが、それも社会による見守りの一環であると解釈するのが、より賢明で前向きなことといえるだろう。
増加著しい虐待の通報件数
厚生労働省がこの8月27日に公表した「令和2年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数(速報値)」によれば、ここ5年の状況は以下のようになっている(2020年度は速報値)。
見てのとおり、全体での伸びもさることながら、「相談経路が警察等」の数字はさらに増加の度合いが著しい(全体は16~20年度で約1.67倍、相談経路が警察等は約1.89倍)。
「頻繁な子どもの泣き声などを耳にし、異常を感じて即110番」といったケースが、おそらく増えていることが想像される数字といえるだろう。
この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。