ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

京都市が直面する3つの危機とは——厳しさを増す「若い世代に選ばれる千年都市」への実現(4/4ページ)

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

三重苦を乗り越えられるか

世界の京都は、はたしてこの三重苦を乗り越えられるだろうか。

問題は、3つの危機すべてがリンクしていることに加え、長期化・拡大化するコロナ禍の終息時期がまるで見通せないことだ。市の改革計画にしても、コロナ禍の影響がなくならない限り、実現可能性はなかなか見えてこない。

市の改革計画を見ると、前述の経費削減案に加え、次のような目標が掲げられている。いずれも2033年度において、

※個人市民税の納税義務者数 2020年度から4万人増加(2019年度67万人)
※市内総生産 2020年度から6000億円増加(2018年度6兆6292億円) 
※新築住宅着工戸数 2020年の9284戸から1万戸/年へ
※中古住宅の流通(売買)戸数3000件/年
※産業用地創出面積 45ha創出 など

今後5年間で財政を見直し、再建の道筋をつけたうえで、成長戦略をということなのだろう。この成長戦略で一般財源収入を100億円以上増加させる、としている。目標の数値だけをみると随分と控えめな成長戦略に思えるが、これとて本当に実現可能かどうかは未知数である。

懸念されるのは、12年後のことよりも、すでに財政難から一部の行政サービス低下が指摘されている点だ。

実際、財政難から新規受け入れを停止した市営の保育所がある。中京区の聚楽保育所だ。民間に移管予定だったのだが、事業者が辞退したため、市は新規受け入れを中止するなど混乱が続いた。市は5月議会に同保育所の廃止条例案を上程し、6月1日に市議会で可決された。

市のホームページには「京都市聚楽保育所は、令和9年4月1日に廃止します。このため、新規入所児童の受入れは行いません」と記載されている。行政サービスの低下はすでに始まっているのである。

子育てに関しては、前述のように行財政改革計画の中に、民間保育園職員の給与に対する補助金の見直し、保育料や学童クラブの利用料の改定等が盛り込まれている。子育て世代の負担増が予想される内容だ。

注目を集める改革案

今後、コロナ対策にかかる費用が膨れ上がる中、インバウンド経済の回復も見込めない。市民の反対が予想される改革案の実行にはある程度時間を要するものとみられ、財政立て直しは容易ではない。

そこに行政サービスの低下や市民負担増加という事態が加われば、財政再生団体に転落した夕張市のように人口流出に拍車がかかるおそれもあり、京都市が直面する「三重苦」は負のスパイラルに陥りかねない。

京都市は行財政計画の中で「若い世代に選ばれる千年都市」の実現を掲げているが、現実は厳しい。秋にも公表されるより具体的な改革案に、市民の注目が集まっている。

山田 稔/ジャーナリスト

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

東洋経済新報社が運営する日本最大級のビジネスニュースサイト。ビジネス、経済、就職など、仕事やプライベートに役立つ詳しい情報を毎日公開。

ページのトップへ

ウチコミ!