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京都市が直面する3つの危機とは——厳しさを増す「若い世代に選ばれる千年都市」への実現(3/4ページ)

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懸念される財源不足

最後に三重苦の3つ目、借金返済について見ていこう。

自治体の財政の健全性を測る指標に「将来負担比率」(現在抱えている負債の大きさを、その地方公共団体の財政規模に対する割合で表したもの)があるが、京都市は2019年度、その指標が政令指定都市の中で最下位だった。

最大の原因は、バブル期に建設した地下鉄・東西線の建設コストと収支見通しの甘さで、市が赤字額約1000億円を一般会計から穴埋めした(2004-2017年)ことと指摘されている。

加えて、歳入面にも構造的な問題を抱えている。高齢化に加え学生人口が市全体の1割という大学の街という特殊な構造のため就業層の割合が低く、人口に占める納税義務者の割合が43.1%(2019年度)と政令指定都市で最低なのである。また市内は、景観保護で高層マンションが立てられないため、固定資産税も増えにくい。また、市内に多くある神社仏閣は固定資産税がかからない。

そこへコロナ禍に見舞われた。2021年度予算の財源不足236億円のうち、コロナ禍による影響は123億円に及んだ。こうして今後5年間で2800億円の財源不足が生じる見込みという破綻寸前の状況に陥ってしまったのである。

市は6月に再生に向けた「行財政改革計画案」を市民に示し、8月に「行財政改革計画」を公表した。市職員の人件費削減、バス・地下鉄の「敬老乗車証」をはじめとする行政サービスの見直し、民間保育園職員の給与に対する補助金の見直し、保育所や学童クラブの利用料の改訂などで2025年度までの5年間で1600億円の財政改善を目指すといったものだ。

市が6月から7月にかけて行った市民への意見募集には、なんと9013件もの意見が寄せられた。

<計画を全体としてみると、具体的な内容に全く言及されておらず、評価に値しない>
<市民サービスがどうなるのかを最初に述べた方が分かりやすい>
<市長自らが失政を認めて、市民に事業見直しへの協力を求めなければいけない>

厳しい声が目につく。コロナ禍が長期化し、先行き不透明感が強まる一方という状況だけに、市の楽観的な改革計画に市民の多くは懐疑的なようだ。

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