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コロナ禍1年、我慢の限界に達したホテル業界 近鉄、藤田観光など名門ホテルを売却、新興勢力は撤退、業態見直しへ(3/3ページ)

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ホテル業界 事前に手を引いていた航空会社はギリギリセーフ?

さて、新型コロナによって水を差されたホテル事業だが、振り返るとほぼ10年周期でイベントリスク(天変地異・疫病・紛争等など多岐の減収要因)に見舞われてきた。

新型コロナは、すでに変異株が次々と出現しているが、この新型コロナに限らず、今後も新しい感染症が発生することが予想され、感染症リスクのサイクル化が危惧される。これまでホテル業界はリーマンショックなど世界的な景気変動(景気後退)を機に業界再編や物件の売買が繰り返されてきた。

今回の新型コロナでは世界的な超金融緩和政策が実施され、ホテルの事業利益と評価が乖離的になっている。こうした背景もあってホテル業界再編、売買は資産面から注目されている面もある。

よくよく思い返せば05年以降のホテル再編も外資がらみである。

具体的には日本の航空大手2社のJAL、ANAのホテル部門の縮小・撤退劇は、モルガン・スタンレー証券など外資系の投資銀行やファンド、金融機関がホテル売買のスキームを支えた。

その10年後には、かつての航空会社系のホテルは、シンガポールや中国系のファンド・企業に転売された。

国策航空会社だったJALは、10年の経営破たんで過剰債務が軽くなったが、収益源となっていたホテル事業(売却前は国内外40ホテル)は、ホテルオークラ(16拠点)に数十億円で売却され、「小が大を飲む」という形になった。つまり、JALは国の管理下における再建に向け、債務削減の代償として、事実上のホテル事業から撤退を余儀なくされたわけである。

一方、ANAも投資銀行(モルガン・スタンレー証券)の主導でホテルを売却し、この売却益1300億円をもとに、経営資源を本業に投入している。仮にこの新型コロナ前に航空2社がこうしたホテルのリストラを行わないでいれば、さらに赤字幅は膨らみ、経営破綻していたかもしれない。

コロナ以前のホテル業界はインバウンドブームを背景に異業種も含めた事業会社の副業として事業参入も目立っていた。これによって遊休地や資産のの活用としても有効で、もちろんのことながら、有力ホテルは高収益で潤っていた。しかし、それも今は昔。新型コロナによって、ホテル事業は不稼働資産になり下がってしまった。

ホテル事業は単なる不動産資産にとどまらず、ホテルスタッフという人的な資産も含まれるが、稼働できなければそれも宝の持ち腐れでしかない。それゆえ、このコロナ禍、あるいは五輪縮小・中止は、戦後の列島改造計画の破綻、バブル崩壊、リーマンショックも含めて、幾度となく繰り返されてきたホテル業界再編の次の引き金になる可能性となりそうだ。

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この記事を書いた人

都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナルの集まり。主に東京の湾岸エリアについてフィールドワークを重ねているが、全国各地のほか、アジア・欧米の状況についても明るい。

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