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コロナ禍1年、我慢の限界に達したホテル業界 近鉄、藤田観光など名門ホテルを売却、新興勢力は撤退、業態見直しへ(2/3ページ)

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我慢の限界に達しつつあるホテル観光業

一方、近鉄HD、西武HD、藤田観光のような大手ではないものの、コロナ以前のインバウンドブームに乗りホテル事業に乗り込んできた新興の不動産デベもその勢いが削がれるどころか、事業の見直しを迫られている。

これらの新興勢力はコロナ前のインバウンドブームを背景に全国のオフィスや賃貸マンション用地をホテルや簡易宿泊施設を誘致する動きを活発に展開してきた。

当然のことながら、こうした動きは東京五輪需要も見込んでいた。しかし、新型コロナによって東京五輪の延期が昨年3月20日決定され、4月7日には1回目の緊急事態宣言が発出。皮肉なことにこの動きに時期を合わせるかのように、これらの新興勢力が進めていたホテルやレジャー施設が続々と完成していったのである。

建物はできたものの、緊急事態による自粛によって、これらの新しい施設には訪れる客もなく開店休業、あるいは開店すらできない状態に陥ってしまった。それから1年、我慢も限界に達しホテル事業撤退どころが、外資系ファンドの傘下に入る、あるいは本業の見直にも迫られている。

そもそもホテルは「稼働資産」の、低収益の事業。しかも人手がかかり、人件費の負担も重くなるため銀行融資の返済も厳しい。このため21年度は中堅のホテル、旅館の経営の正念場になる。

新興勢力の「レアル」「グローバル社」「OYO」の撤退劇

こうしたなかで国内の観光地としても人気もあり、インバウンド需要の最盛期にはオーバーツーリズムがクローズアップされた京都市でさえ、コロナ禍のいまはホテル事業のほころびが目立ってきた。

そんな京都では、ゲストハウスを運営する「レアル」(京都市)も3月25日京都地裁に民事再生法の適用を申請した。コロナ以前のレアルはホテルやゲストハウスを京都市内に75軒ほど展開、上場も目指していた。

また、京都で小規模な高級ホテルを手掛けていた「THEグローバル社」(以下、グローバル社)の動向も注目されている。


一際目立つグローバル社の看板(新宿大ガード)/©︎編集部

ハリウッド女優のミランダ・カーにアルファベットの「g」をかたどった自社のロゴマークを持たせて踊らせるド派手なCMで衆目を引いたグローバル社。同社の本業はマンションや戸建ての販売事業だ。ところが、京都のインバウンド需要の風に乗って東証一部上場も果たしたことから「ホテルベンチャーの風雲児」ともてはやされた。

持株会社のグローバル社の傘下にはマンション事業、戸建て事業、ホテル事業などを事業別に8社の連結子会社を抱えるでグループを形成し、「ウィルローズ」「ウィルレーナ」というブランド名でマンション分譲のほか、京都や東京ではホテル運営、投資用ホテル開発を主軸に展開し、19年6月期は売上高358億円を計上していた。

なかでもコロナ前には、京都市などの小規模な土地を買い上げ、しゃれたホテルに仕立て、買い手を見つけて売却するビジネスで注目された。また、売ったホテルを自らサブリースすることもあり、ホテル関連の業績を伸ばしていた。

このホテルのサブリース事業は企業(オーナー)から「サブリースで丸ごと面倒を見てくれて助かる」といった評価も上々だったようだ。しかし、新型コロナによって状況が一変し、これらホテル事業が大きな負担となり、失速してしまった。

フタを開ければ20年6月期第3四半期のグローバル社の決算短信では、「継続企業の前提に関する注記」を記載せざるを得なくなるほどになっていた。これはホテル事業の損失が響き、17億円余りの四半期損失を計上したためによる。追加融資などによって資金を手当てしたものの、新規に着手したホテルや住宅などの費用の支払い面も苦しく、株価は低迷していた。

こうした苦境のなか、同社では第三者割当増資を実施。不動産開発会社の「アスコット」(本社・東京)がこれを引き受け、グローバル社を子会社化した。このアスコットは中国・平安グループの子会社で、このグローバル社の増資を受けるにあたって、自身も第三者割当増資を実施し、これをSBIホールディングスが引き受けSBIの子会社となった。つまり、現在のグローバル社は平安グループとSBIホールディングスの子会社になったというわけである。

この結果、グルーバル社は、軸足(本社)を京都から東京に移し、ホテル事業を縮小し、過去の住宅事業に戻ることで再建を果たそうとしている。

このほかにもソフトバンクグループが支援し、日本でホテルと不動産賃貸事業を展開するインド系の「OYO(オヨ)」も、苦戦を強いられており、リストラのまっただなかだ。OYOはホテルチェーンに加え、不動産賃貸を日本で展開しているが、どうやら賃貸事業から撤退する模様だ。ピーク時の同社はアパートなど賃貸物件を8000室内外手掛けていたが、最近は数百室まで縮小させている。


苦戦を強いられているOYO/©︎編集部

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この記事を書いた人

都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナルの集まり。主に東京の湾岸エリアについてフィールドワークを重ねているが、全国各地のほか、アジア・欧米の状況についても明るい。

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