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『メインストリーム』/一般の人がSNSでカリスマに そのときに人はどう変わるのか?(1/3ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2021/10/06

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メディアの移り変わりとそこから生まれるカリスマ

1976年、シドニー・ルメット監督作品『ネットワーク』(日本公開は1977年)が公開され、アカデミー賞作品賞にノミネートされるなど話題を呼んだ。

『ネットワーク』という作品はテレビ界が舞台。アメリカ四大ネットワーク局の一つであるUBSのニュースキャスター、ハワード・ビール(ピーター・フィンチ)は、15年間キャスターを務めた報道番組を降板させられることになった。視聴率の低下が原因である。

報道部門責任者で、ハワードと苦楽をともにした盟友のマックス(ウィリアム・ホールデン)がハワードに降板の件を告げると、ハワードは「生放送中に自殺してやる」と呟く。酒を酌み交わしながらの話なのでマックスは真に受けなかったが、ハワードは次の生放送で「来週で番組を降板だ。来週の生放送中に、私は自殺する」と予告してしまう。

生放送での自殺予告と歯に衣着せぬ反体制発言が思わぬ反響を呼んだため、野心に燃える若き女性プロデューサー、ダイアナ(フェイ・ダナウェイ)はハワードの続投を進言。彼を現代の預言者として祭り上げ、「ハワード・ビール・ショー」を企画する。番組は大ヒット。ハワードは大衆のカリスマとなってゆくという物語である。

『ネットワーク』公開時は、まだインターネットやSNSなるものが世の中に登場していない。後にインターネットが急激に普及し、とてつもない影響力を持ったことは万人の知るところだ。電通が2020年3月に発表した「日本の広告費」によると、2019年ついにインターネット広告費がテレビメディア広告費を上回る結果となった。

『ネットワーク』はテレビがメディアの王様だった時代のお話である。ハワード・ビールはテレビという巨大メディアが生み出したカリスマであり、怪物だった。いまや、テレビはメディアの王様の座から転落寸前であり、今後ハワード・ビールのようなカリスマ的怪物を生み出すのはインターネットやSNSであろう。そこに注目したのが、本作『メインストリーム』である。

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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