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『映画ドラえもん のび太の新恐竜』/絆、泣かせ、友情、冒険…ドラえもんシリーズの鉄板娯楽作(2/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2020/08/01

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春シーズン定番『映画ドラえもん』満を持しての公開

主なハリウッド系メジャー大作の公開が見送られた今夏、それに代わる目玉として期待されている日本映画が、「ドラえもん50周年記念作品」と銘打たれたシリーズ第40作『映画ドラえもん のび太の新恐竜』である。

実績は十分だ。「よいこ」「小学一年生」等の小学館学年誌で原作コミックの連載がスタートしたのが1970年1月。テレビアニメ化を経て、劇場版第1作『ドラえもん のび太の恐竜』が公開されたのが1980年3月。以来、声優陣が交代した2005年を除いて毎年春休みシーズンに新作が公開されてきた長寿シリーズである。第38作『のび太の宝島』(18)では遂に興行収入53億円を超え、第39作『のび太の月面探査記』(19)も50億円超を記録している。

春休みシーズンの映画興行を牽引してきたドル箱シリーズであるが、今年は新型コロナウイルスの影響により8月7日に公開が延期されたというわけである。

『映画ドラえもん』シリーズは観客の年齢層を選ばない。

かつて東京の映画館では、毎年新作公開に合わせて「大人だけのドラえもんオールナイト」というイベントが開催されていた。子どもを連れてゆく場合はもちろん、大人一人で観に行っても安心して楽しめるハズレのないシリーズ、それが『映画ドラえもん』シリーズである。

のび太は恐竜博の化石発掘体験で1つの化石を発見。「これは絶対に恐竜の卵だ!」と信じ、その化石を持ち帰る。ドラえもんのひみつ道具「タイムふろしき」で化石を元の状態に戻してみると、そこから誕生したのは双子の恐竜だった。しかも、未発見の新種だ。のび太は2匹にキューとミューと名を付け、育てることにする。

キューとミューの性格の違いに苦労しながらも、愛情たっぷりに育ててゆくのび太であったが、恐竜の生きていた時代と現代とでは環境があまりに違いすぎる。このまま2匹を現代で生活させてゆくことは不可能だ。のび太はキューとミューを元の時代へ返す決心をし、ドラえもんや仲間たちとともにタイムマシンで6600万年前の白亜紀へと旅立つ―。

今回もハズしていない。大人にとっても子どもにとっても、恐竜ネタは鉄板である。

野生動物(恐竜)との出会い、飼育と交流、そして別れという観る者の涙を誘うフォーマットは、シリーズ第1作『のび太の恐竜』(80)ですでに完成していた。モチーフとなっているのは、狩猟監視官と子どもライオンの交流を描いたイギリス映画『野生のエルザ』(66)である。

『のび太の恐竜』はシリーズ屈指の名作となり、第26作『のび太の恐竜2006』(06)としてリメイクされている。本作『のび太の新恐竜』はリメイク作品ではないが、フォーマットは同じ。泣かせの要素だけでなく、ワクワクする冒険譚を加えることも忘れていない。

この上出来の娯楽作が、低迷する映画興行の救世主となることを祈る。

『映画ドラえもん のび太の新恐竜』
原作:藤子・F・不二雄
監督:今井一暁
脚本:川村元気
声の出演:水田わさび/大原めぐみ/かかずゆみ/木村昴/関智一
2020年8月7日より全国東宝系にて公開

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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