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「ぼっち」の賃貸生活を楽しくする――誰もやらないけれどやってみてよかったこと(3/4ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2021/07/02

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物好き? おせっかい? 物件の掃除を買って出た

賃貸住宅に暮らしていて、何かにつけ「管理会社の対応が遅い」「掃除が雑だ」など、ストレスを感じている入居者は、それこそゴマンといるだろう。

私も、かつてはそのひとりだった。「何のための管理費〇千円だ」と、腹を立てることも多かった。

そこで、ある物件に暮らした際、私は発想を変えてみた。一入居者の立場ながら、汚れた共用部分の清掃を自ら始めてみた。

ただし、嫌味やあてつけに取られても困るので、管理会社には初めに申し出た。

「私の部屋の前の廊下に土ぼこりが溜まっているので、担当の方が次に来られる前に、私が軽く掃除させてもらってもいいですか」と、いった感じだ。

次いで、徐々に手を出す範囲を広げていった。エントランス、階段、駐輪場と、「汚れていたら勝手にやらせてもらいますね」を進めていったわけだ。

そのうち、共用水栓を開け閉めする許可ももらい、放置物や落し物があれば保管場所にしまい、管理会社に連絡し、処理を引き継ぐといった流れもこしらえた。さらには、切れた電灯の取り替えも買って出た。

ただし、これらはもちろん無償のボランティアだ。箒も、デッキブラシも、ゴミ拾い用の火ばさみも、すべて自分で買い、出費した(替えの電灯は一旦立て替え払い)。

しかし、これをしたことでのリターンは少なくなかった。まず、何よりもストレスが生じない。

「あそこが汚れていて不快だ」のストレス、「いつになったら掃除しに来るんだ」のストレス、さらには清掃後の「全然キレイになっていないじゃないか」のストレス……。

まさに「あるある」な、3重のストレスを自らの手で冒頭から葬ってしまえるのは、ある意味、快感だった。昔テレビでよく耳にした「暗いと不平を言うよりも、すすんで明かりを点けよう」の意義が、実によく分かったものだ。

さらには、コミュニケーションが増えたのもうれしかった。

掃除の最中、たびたび出会う同じ物件の入居者たち、連絡を取り合う管理会社の担当者(と、思っていたら社長だった)、さらにはエントランスで顔を合わせるご近所の方……と、さまざまな人と知り合うことができた。

あるとき、私の姿を見て「管理人が住み込み始めた」と思った近隣の人が話しかけてきた。

「おたくの玄関前によく停められている車のことで、相談があるんだけど……」

そうなのだ。さきほど記した町内会への入会は、実は、これがきっかけだった。

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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