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一括返済のメリット・デメリットは?

住宅ローンの一括返済はおすすめできる? 得するケース、損するケースをプロが検証(4/4ページ)

牧野寿和牧野寿和

2017/09/12

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一括返済で得するケース、損するケース

また、手元の資金を返済に回すのではなく、運用に回すことも検討することをおすすめします。これだけの低金利ですから、住宅ローンの金利以上の利回りで運用することは決して不可能なことではありません。

たとえば、借入れから25年目の時点で、一括返済を行なうと、必要な資金は974万円です。

仮に、この時点で手持ちの現金が974万円あった場合、このお金を使って一括返済するか、それとも一括返済ではなく、老後の生活費を含めた資産形成のための運用に回したほうがいいのか、どちらがいいのでしょうか。

仮に、一括返済は行なわず、35年目まで10年間、毎月8万4686円を返済していくと、10年間の返済額は約1016万円(8万4686円×12カ月×10年)になります。

25年目で一括返済した場合よりも、10年間で42万円(1016万円-974万円)の利息を多く支払うことになりますが、10年間の運用でそれ以上の成果を得ることができれば、一括返済ではなく運用を選択するメリットがあったということが言えるでしょう。

どのような選択をするか、将来の設計を含め慎重に検討をすることが大切です。

一括返済してもいい条件とは?

一括返済をすることが家計のためにも有効なケースは、主に次のふたつに限られています。

(1)住宅ローン契約当初から一括返済をする時期を決めて、計画的に資金を貯めて実行する場合

(2)相続や贈与で当てにしていなかったまとまったお金が手に入った場合

(1)の場合でも、上記の表のケースで言えば、「住宅ローン返済25年目に974万円貯めて完済する」と当初から決めていても、実際に一括返済を行なうときには、住宅ローン契約時とは家計や景気も変わっていることも考えられます。

その時点で改めて、将来の家計収支をシミュレーションしてから実行するかどうかを決めることが必要です。

また、退職金を住宅ローンの一括返済にあてたいと相談を受けることがありますが、退職金が入ってくる時期は、通常、上記の表の25年目以降にあたります。ここで老後の生活資金である退職金を使って、住宅ローンの一括返済をするのは賢い選択と言えるでしょうか。

お客さまからのご依頼で、退職金利用のシミュレーションをすることがありますが、すでに公的年金のほかに老後の生活のための資金を準備している人以外、退職金を住宅ローン返済に使うことは、おすすめできません。

住宅ローンは完済できても、70代後半や80代になってから生活資金が枯渇してしまう結果が多いからです。

一度返済してしまったら、そのお金は戻ってきません。繰り返しになりますが、一括返済をする時は、将来の家計収支を確認してから実行することが大切です。

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この記事を書いた人

CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士

1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。

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