住宅ローンの一括返済はおすすめできる? 得するケース、損するケースをプロが検証(2/4ページ)
牧野寿和
2017/09/12
一括返済のデメリットは?
次に一括返済のデメリットについても見てみましょう。
(1)手持ちの現金が減ってしまう
一括返済に手持ちの資金を使ってしまうと、完済後の家計収支が回らなくなることがあります。
たとえば、手持ちの現金が減ってしまい、その後の子どもの教育費などにあてる現金がなくなってしまった場合、住宅ローンよりも金利が高い、教育ローンを借りなくてはならなくなることもあり得ます。
(2)一括返済の手数料がかかる
金融機関によっては、一括返済の手続きに手数料がかかるところがあります。なかには、通常の繰り上げ返済をする場合の手数料は不要でも、一括返済をする場合には手数料がかかる金融機関もあります。また、手数料の額は金融機関ごとに違います。
実際に一括返済をする場合は、手数料について事前に金融機関に確認をしておきましょう。
(3)住宅ローン控除が受けられなくなる
住宅ローンを借りている人の多くは、住宅ローン控除の適応を受けています。これは、年末の住宅ローン残高の1%にあたる金額が、10年間にわたって、最大400万円まで所得税額から控除される制度です。
仮に、住宅ローンを借りて住宅ローン控除を受けていても、たとえば借り入れから5年目の年の途中で一括完済をしたら、借入残高がなくなり、その年の年末以降は住宅ローン減税を受けられなくなります。
なお、一括返済をした場合に軽減できる利息の額が、住宅ローン控除で受けられる減税額を超えるのであれば、一括返済のほうが得ということになります。逆に、軽減できる利息の額が減税額よりも小さいのであれば、一括返済はしないほうが得と言えるでしょう。
この記事を書いた人
CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。