下落で始まった2021年――株式投資の格言から読み解く今の相場は「悲観」か「楽観」か?(2/2ページ)
望月 純夫
2021/01/04
注目5テーマの推奨5銘柄
長野計器(7715)は車載向けの世界屈指の圧力計・圧力センサーが主力だが、半導体製造ライン向け製造圧力センサーやデジタル圧力計でも高い実績を誇る。燃料電池車の普及には水素ステーションの普及が欠かせない。同社はこの水素ステーション向けに独自の高圧技術を生かした製品を提供している。高圧水素用圧力センサーの特許を取得しており、2017年に長野県知事賞を受賞している。トヨタ燃料電池車の新型「ミライ」で燃料電池車に対する注目度が上昇する中、長野計器の株価にもフォローの風が期待できる。
長野計器(7715)
東邦チタニウム(5727)はチタン製錬を中核事業としており、高度なチタン関連を礎とした電子材料分野でも高シェアを誇っている。業績的には航空機向けチタンは不振で21年3月期は大幅減収減益が避けられない。しかしながら、22年3月期は5G投資需要もありV字回復に期待。さらに技術開発分野では、全固体電池や空気二次電池に応用されるリチウムランタンチタン酸化物という有望素材を手掛けており、ここも注目しておきたい。
東邦チタニウム(5727)
アドソル日進(3837)は独立系ソフト開発会社で大企業向けシステム開発において競争力が高く、業界での優位性をもつ。日本IBMや日立、東芝といったそうそうたる大手IT企業と一緒に産業技術総合研究所がまとめたAIの品質ガイドライン策定にも参画するなど、同分野における実力は証明済みだ。また前期まで10期連続の営業増益を達成しているところもプラス材料。
アドソル日進(3837)
アドテック プラズマ テクノロジー(6668)は、半導体向けを主力とする高周波プラズマ電源装置のメーカー最大手。足元の業績は伸び悩んでいるものの、5G関連やデータセンタ増設を背景とした半導体設計需要の高まりを背景に中期成長トレンドに陰りは見られない。21年8月期は9%増の9億5000万円程度の増益を見込んでいる。
アドテック プラズマ テクノロジー(6668)
大真空(6962)は、高速通信規格5Gの商用サービスが徐々に軌道に乗る中、KDDIと米アマゾン傘下のAWSが5Gを使ったクラウドサービスをスタートさせ、21年1-6月期のiPhone生産計画を前年同期比3割増とするなど積極攻勢の構えだ。21年3月期営業利益は前期比3.6倍の10億円を予想している。22年3月期は車向けの回復で2桁の利益成長期待。
大真空(6962)
田中化学研究所(4080・JQ)、エヌ・ピー・シー(6255・東マ)、三櫻工業(6584)、キャリアリンク(6070)、菊池製作所(3444・JQ)は注目継続である。
田中化学研究所(4080・JQ)
エヌ・ピー・シー(6255・東マ)
三櫻工業(6584)
キャリアリンク(6070)
菊池製作所(3444・JQ)
投資信託はインデックスだけでなく、アクティブ、新興国にも目を向けよ
現在、インターネット証券会社を通じての投資信託販売が急増している。
実際には20年1月から11月までの月平均の資金流入額は約680億円と昨年比の3倍に増加。特に若年層を中心に資産形成に向けた投信購入が目立っている。
新型コロナ感染により3月中に株価が大幅下落した後の株価上昇が追い風となり、ネット証券の投信残高は11月末で約2兆5000億円と、この2年間で倍増している。三菱UFJ国際投信によれば、ネット証券の資金流入をみると19年10月から14カ月連続の流入超になっている。
運用資金の5割弱が先進国株で、約1割が日本株です。国内外とも株価指数に連動するインデックス型投信の人気が高く純資産残高が7月に2兆円を超えている。
大手ネット証券5社の口座数も、9月までの6カ月間で100万以上増えている。新型コロナにより在宅勤務が始まったことで、証券投資に踏み切った人が増えた。その背景には老後資が不足するとした2019年の「2000万円問題」により運用への関心が高まったことも影響してようだ。
過去の投資スタイルは、株価が上昇すれば売却し利益を確定するものだった。しかし、最近の個人投資家の傾向は、積立型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)の活用だ。14年にNISAは14年に導入され、18年につみたてNISAをはじまったことで、投資に対しての認識が高まった効果と言える。ようやく日本も長期投資が理解され、米国のように厚みのある証券市場が出来る可能性が出てきたようだ。
とはいえ、その投資の中心はインデックス運用で長中期資産形成だ。
これはこれでよいが、今年はアクティブ運用で機動的に短期資産運用を併用することを中・上級者はチャレンジしてほしい。先進各国が新型コロナによって身動きができない状態だ。もちろん、リスクの想定は必要なのは当然だが、今年は中国からベトナム、インド、インドネシアなどのアジア諸国の成長への投資も検討してみたいところ。
この記事を書いた人
コンサルタント、ラジオパーソナリティ
1971年慶應大学法学部卒、同年山一証券入社。1985年新本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。 1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。