ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

【家族信託活用事例】財産は一族で承継させたい――子どものいない夫婦の相続で揉めさせないために(2/2ページ)

谷口 亨谷口 亨

2020/01/22

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

<相談の要点>
・土地と自宅が長男亡きあとに嫁に引き継がれる。それは納得できるが、嫁が亡くなったあとに土地と自宅が嫁の兄弟のものになるのは避けたい。

・山田家の資産は、いずれ孫(次男の子ども)へと引き継ぎたい。

<提案>
・2代先までを見据えた財産承継を考えるケースなので、遺言ではなく、家族信託を使うのがベターな選択といえます。

・この際、受託者は長男、第二受託者は次男、居住権は長男の妻、信託終了時の財産の帰属者(残余財産受益者)を孫(次男の子)にします。

<提案のポイント>

・子どものいない夫婦に相続が発生した場合、法律で定められた相続人は、配偶者と亡くなられた方の兄弟姉妹です。今回は、配偶者であるご主人が亡くなっているので、すべての財産が配偶者の兄弟姉妹に相続されることになります。

・財産の承継先を指定する方法として、山田さんもおっしゃっていたように遺言があります。遺言を残していれば法律で定めた相続人以外に財産を残すことができます。このときにお嫁さんにあらかじめ「甥に(次男の子)に渡す」という遺言を書いてもらい指定しておけば、お嫁さんの兄弟に財産がわたることはありません。しかし、もし現時点でお嫁さんが了承しても、実際に遺言を書いてくれる保証はありませんし、遺言書が書き直されることもあります。

・相談者はお嫁さんと円満にやっていきたいという強いお気持ちがあるため、遺言を書くように頼むのはやめにします。

・お嫁さんの家族への貢献度を考えて、まずはお嫁さんを大事に思っている率直な気持ちを直接伝えます。その上で、嫁の存命中は居住権(受益権)をきちんと守ることを信託に書き込みます。

・家と土地の受託者は、長男にしておき、万が一長男が管理できなくなった場合に備えて、次の管理者(受託者)を次男に設定しておきます。

こうした2次相続、3次相続までを考慮した遺産相続ができるのが、家族信託の大きな特徴といえます。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

弁護士

一橋大学法学部卒。1985年に弁護士資格取得。現在は新麹町法律事務所のパートナー弁護士として、家族問題、認知症、相続問題など幅広い分野を担当。2015年12月からNPO終活支援センター千葉の理事として活動を始めるとともに「家族信託」についての案件を多数手がけている。

ページのトップへ

ウチコミ!