なぜ田舎では行列スイーツが最強の「お返し」になれないのか(2/2ページ)
馬場未織
2016/03/18
いろいろな形の「お互いさま」をつくる
実は、わたしがNPO法人南房総リパブリックを立ち上げようと思った理由のひとつには、この「地域の方々にお返ししたい」という気持ちがあるんです。
都市居住者と南房総の農村をつなぎ、南房総地域の魅力や課題を共有する仲間を増やしていこうという思いでいくつかの事業を進めています。
それらは、いつも助けてくださる方に直接届くものではないかもしれませんが、二地域居住をしているというわたしの立場でできる、「お金で買ったもの」ではない、恩返しの形です。
訪れた人たちは、南房総ってほんといい場所だね! と感動したり、本当に気に入るとしばしば訪れるようになったり、不動産を探すようになる人もいます。
そして、そんな人たちと地元の人たちが共にいる場で、「なーんもない田舎だから」といいながら口元が緩んでいる農家さんなどがいたりすると、じんわり嬉しくなります。この土地での暮らしに等身大の誇りを持つことや、あたり前すぎて見えないもののなかにある大きな価値に気づくこと。それが、わたしたちのせめてもの恩返しなのかなと思います。
とはいえ。
やっぱり、「いつも助けてくれてありがとう!」を形にして、お返ししたい。これはずっと、わたしのなかでの課題です。
もし、これなら喜ばれるよという絶妙なお返しを知っている方がいたら、ぜひとも教えてください。「こんなもの返されてもね」という本音も大歓迎です。
お互いさまが、形になればうれしいです。
この記事を書いた人
NPO法人南房総リパブリック理事長
1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。