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知っておきたい 賃貸マンションやアパートで「大騒ぎ・周りに迷惑」 実は法律違反(2/2ページ)

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周りに迷惑をかけないことは賃貸住宅の「当然の用法」

では、そんな決まりごと(人を呼んで騒音を出すな)が契約の中に存在しなかったとしたらどうなるだろう?

え、そんなことってあるの?――といった反応がありそうだが、実はあまりに常識的な問題であるためか、具体的には存在しないケースが普通だ。例えば、多くの賃貸管理会社・仲介会社がひな型とする国土交通省の賃貸住宅標準契約書をひもといてみると、これに類するものとしては、「大音量でテレビ、ステレオ等の操作、ピアノ等の演奏を行うこと(をしてはならない)」までが記されているにすぎない。むしろ逆にいうと、賃貸住宅で発生が予想される迷惑行為の全部を集めてここに盛り込むことこそ、困難な作業といえるわけだ。

そこで、もうひとつの条件が発動することになる。「その目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない」の部分だ。

答えはもうお分かりと思うが、ここでいう目的物とは、アパートやマンションの賃貸借契約においては、当然ながらその対象となっている部屋をいう。

では、その「性質」とは何か? それはもちろんそこが住宅である以上、そこに住む人みんなが安全かつ平穏で、静かに、安心して暮らせる場所であることだ。

すると、そのようなあるべき性質を損なう行為は、つまりは「定まった用法に従わない」行為となる。

すなわち、友人などを部屋に集めて騒ぐことに限らず、周りに住む人々に対し、安全・安心かつ平穏な暮らしをさせない迷惑な行為は、すべてがこの「定まった用法に従わない」行為であると考えるのが正解だ。イコール、民法594条1項違反となるわけだ。

なお、専門的にはこれを「用法遵守義務違反」という。犬・猫を飼ってはいけないと契約に定められている物件で犬・猫を飼うのはすなわち用法遵守義務違反。たとえ契約書には書かれていなくとも、夜、部屋に人を呼んで騒ぎ、周りの部屋の人が眠れなくなるような事態を招けば、それも用法遵守義務違反となるわけだ。

「生活マナーがなっていない」「常識をわきまえろ」などと叱られる行為である以前に、実はこれらは立派な法律違反であるというのが、あまり知られていない事実となる。

オーナーも追い込まれる

ところで冒頭の会話では、後輩社員は「次に騒いだら退去を考えてもらう」と、大家さん=賃貸住宅オーナーから厳しく注意を受けていた。

そこで知っておきたいのは、こうした場合のオーナーの立ち位置だ。

賃貸住宅で、一部の非常識な入居者が周りの入居者に迷惑をかけ、そのことでオーナーに次々と苦情が寄せられるといった場合においては、実はオーナーも法律上追い込まれた立場に立つことになる。

どういうことか? 答えはこちらも民法にある。賃貸住宅オーナーには、入居者に対し、家賃と引き換えに物件を「使用収益」させなければならない義務が課されているからだ。

(民法第601条)
「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。」

なお、ここでいう使用及び収益=使用収益とは、さきほども似た話が出てきたが、そこに住む人が安全かつ平穏で、静かに、安心して暮らせることだ。

つまり、賃貸住宅で、非常識な入居者が周りの入居者に迷惑をかけ、その人たちが平穏な生活ができずに困っている状態というのは、オーナーが彼らに対し、物件を使用収益させる義務を果たせていない状態であるにほかならない。ゆえに、その場合はオーナーもまた法律(上記601条)に違反していることになるわけだ。

すなわち、賃貸マンションやアパートの部屋に人を呼び、大騒ぎして周りに迷惑をかけるといった行為は、法律論的に解釈すると、違反者を2人も生んでしまう罪深い行為となる。賃貸住宅で暮らす人は、若い人も、そうでない人も、とりあえずそのことまではしっかりと覚えておくのがよいだろう。

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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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