実家を出て初めての賃貸一人暮らしで「失敗」「反省」――事例に学ぼう
賃貸幸せラボラトリー
2024/01/26
実家のようにはいきません
進学のため、就職のため。
この春、生まれて初めて親と住む実家を巣立ち、アパートや賃貸マンションで一人暮らしを始める若者も多いことだろう。
だが、そこで時折待っているのが、慣れない環境での暮らしにともなう「失敗」だ。初めての賃貸一人暮らしに臨む若者は、概してトラブルを生むタマゴにもなりやすい。
もちろん、失敗や反省は大事な成長の糧でもある。しかし、事前に経験者の声から学び、心の準備をしておくのも悪くない。
ちなみに、若者が起こしやすい(もちろん若者以外も起こすが)賃貸集合住宅でのトラブルといえば……
「騒音とゴミ出しでしょ? もちろん気をつけますよ」
そのとおり。だが、そんな優秀な人もぜひこの記事は読んでおいてほしいのだ。
あまり話題にならないが、意外と「あるある」な、落とし穴的事例を主に挙げていく。
そこは共用部分。アナタ専用の物置きではない
入居したその日に、いきなり同じ賃貸マンションの住人からキツく叱られたというAさん。何をしでかしたのか?
「引っ越し荷物を解いたダンボール箱です。まとめて積み上げておいたんです。私の部屋のあるフロアの廊下の端に。どうやってゴミ出しすればいいのか分からなくて、とりあえず……」
これ、実は起こりがちな事例だ。
Aさんと同じ理由で、アパート脇の路地にダンボールを放置してしまい、「放火の的になる!」と、お隣の方に怒鳴られた例もある。新生活のスタートがこれでは、まさに意気消沈だ。
なお、Aさんは広い一戸建て育ち。敷地の内側は、当然ながら隅々までAさんのお宅のもの。好きな物を置いてよい。
しかしながら、賃貸集合住宅では、部屋を一歩出ればそこは共用部分だ。私物を勝手に置くのは許されない。
そうか、音って反射するんだ……
初めての一人暮らしのスタート。それとともに始まった大学生活。そこで新しく出来た友人たちを賃貸マンションの自室にときどき呼ぶようになったBさん。
夏が近づき、暖かくなった頃、管理会社から、
「あなたの部屋の話し声がいつもうるさいと、ほかの部屋から苦情が出ています」
――注意を受けてしまったという。
とはいえ、Bさん、
「比較的防音はしっかりしているこの建物。大騒ぎした覚えもないのに……と、初めは疑問に感じました」
答えは、実は「窓」にあった。
「間もなく自分でも気付きました。このマンション、隣にビルが建っていて、各部屋の窓の向こうがそのビルの壁なんです。なので、窓を開けたまま話をすると、声が反響して周りに響きわたる状態です」
そのため、窓を開ける機会が増える暖かい季節になるのとともに、苦情が発生したというわけだ。
ちなみに、Bさんの実家は高層マンション。窓の向こうは見渡す限り「空ばかり」といった環境のなかで育ってきたのだそうだ。
洗濯するのに、時間を気にしないといけない世界があったなんて……
就職し、家賃の安いアパートで初めての一人暮らしを始めたCさん。生まれて以降、常に祖父母や両親の建てた広い一戸建てに暮らしていたという。
「なので、最初にここを内見したときはビックリしました。部屋の外のベランダに洗濯機置き場があるなんて…! それでも、給料が安い間は我慢と思って入居しました」
しかし、そんなある日、大家さんを通じてご近所から苦情が。
「夜遅くの洗濯は控えてもらえないか」
遅い仕事帰りでも、マメに洗濯機を動かして洗濯に励んでいたCさん。
「洗濯機が外にあるんだから、音は当然周りのお家にも届くんですよね。そんな当たり前のことに私はまったく気付いていませんでした…」
なお、経済観念のしっかりしているCさんは、「外置きするのだから」と、洗濯機は中古品を使っていた。古いため、ますます音が響く状態だったらしい。
親を見習っての行動で、階下が水難に!
「玄関周りは家の顔。幸運の入り口。だから常にキレイに」
そう言って、ときにはデッキブラシとホースで、ジャブジャブ、ゴシゴシ、玄関フロア周辺を水洗いするというDさんのご両親。建物は広い庭の付いた一戸建てだ。
そこで、息子のDさんもそれに倣い、初めての一人暮らしの舞台となった古い賃貸マンションの3階の部屋で、ジャブジャブ、ゴシゴシやっていたところ――、
管理会社から電話が入ったそうだ。
「下の部屋から苦情が来ています!」
なんと、掃除の水が、床の隙間、あるいは亀裂に染み込んだらしく、真下の部屋の玄関の天井や壁を濡らしてしまう“大惨事”に。
「考えてみれば、ここは僕の実家のような、床下に地面が広がっている一戸建てではなく、建物の3階でした。しかも古いマンション。ですが、こんなことも起こりうるんだと事前に予想するのは、その時点の僕には無理でした…」
チラシで溢れた郵便受け。周りはなぜか「水害」に
両親やきょうだいとともに実家に住んでいた頃は、管理は親任せ。家の郵便受けに触れることなど滅多になかったEさん。
その勢いのまま、アパートで一人暮らしを始めてからも、郵便受けを開くなど、宅配便の不在連絡票が入っていそうな時くらいのみだったそうだ。
すると、ある日、管理会社から電話が…
「郵便受けを手紙やチラシで埋めっぱなしにしていませんか? ほかの部屋から苦情が出ています!」
なんと、中がギッシリと詰まっているため、差し入れ口から飛び出していたチラシの束に雨が当たり、それが染み込んで内側は「洪水」に。
水はさらに別の部屋の郵便受けにも流れ込み、大事な郵便物をいくつも濡らしてしまっていたそうだ。
変な人と疑っていたら、実は大事なあの方……
「初めて親元を離れ、知らない遠くの街で女性の一人暮らし。とにかく毎日緊張していました」と、いうFさん。
住み始めた賃貸マンションの周囲で、よく見かける中年男性を警戒していたそうだ。
「勤めているような雰囲気もなく、いつもラフな格好で、おはよう、とか、こんばんは、とか、おかえりなさい、とか、やたらと明るい笑顔で声をかけられるのが苦痛でした」
そのため、初めの数回は挨拶を返したものの、やがて会釈のみに。
さらには、挨拶されないよう目を合わさずスルー、その場を急いで立ち去る――といった対応も増えていたある晩のこと。
「オートロックの扉が開いた内側の廊下の先から、手に長いドライバーを持ってその人が……」
驚いて立ちすくみ、その場を動けなくなったというFさん。近づいてきた男性曰く、
「住み心地はどうですか。何かあったら言ってくださいね。管理会社でもいいし、私でもいいし」
男性はこの物件のオーナー、つまり大家だったそうだ。
実はFさん、「自分は駅前の不動産会社から部屋を借りている」と、頭から思っていたとのこと。
しかし、その会社、実際には物件の仲介をしただけで、すでにFさんとの間には何の契約関係もない。
「契約書をよく見たら、貸主として個人の方の名前がありました。住所はマンションのすぐ近くでした。賃貸住宅ってそういう仕組みになっているんですね」
こうした誤解や勘違い、実は結構ある。事例は若者に多い。自分が誰から部屋を借りているのか、誰が建物を管理しているかなど、知らないまま暮らしているのだ。
誰かにとんだ失礼を働いたり、無用の悩みを抱えたりしないよう、社会へ踏み出す第一歩として、自身が交わしている契約についてはしっかりと内容を確認し、理解しておくことを勧めたい。
(文/賃貸幸せラボラトリー)
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この記事を書いた人
編集者・ライター
賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室