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まちと住まいの空間第15回【宮城県 江島 その2】

震災と過疎化で変わる離島――島の記憶をたどる(2/3ページ)

岡本哲志岡本哲志

2019/09/09

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祭が行われてきた久須師神社からの眺望


写真2、久須師神社から港を眺め

久須師神社からは、港や集落が見渡せる。夏の暑い時期、心地よい風が吹き抜ける。久須師神社例祭の時は、神輿が神社の境内を出て急な石段を下り、港で海中渡御した。その後、神社まで急な階段を戻る神輿ルートだった。ちなみに、江島の神輿渡御は、担ぎ手を含め白装束である。しかし、平成7、8年ころになると、担ぎ手もいなくなり、神社の前に神輿が置かれるだけとなった。
神輿渡御が終わると、神社の境内では神楽が舞われた。

江島の法印神楽は、雄勝十五浜と比べ新しく、大正8(1919)年に導入されたもので、修験であった法印との深い結びつきはない。だが、離島という特殊環境もあり、古い舞いが継承され続け宮城県指定無形民俗文化財となっている。この神楽も東日本大震災の2、3年前には神社の境内でやらなくなった。いまは陸側の女川町で神楽を保存する練習が行われ、東京などに呼ばれて舞うという。

港がよく見える久須師神社が置かれた場所は、日和山としての役割も担っていたのではないかと、心地よい風に吹かれながら脳裏を巡る(写真2、久須師神社から港を眺め)。そのことを裏づける話として、いまは神社の向かいは、社務所になっているが、以前は江島の漁業共同組合の建物があったという。その漁業協同組合も、いまは港近くに下りている。日和山との思いが確信に変わる。

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この記事を書いた人

岡本哲志都市建築研究所 主宰

岡本哲志都市建築研究所 主宰。都市形成史家。1952年東京都生まれ。博士(工学)。2011年都市住宅学会賞著作賞受賞。法政大学教授、九段観光ビジネス専門学校校長を経て現職。日本各地の土地と水辺空間の調査研究を長年行ってきた。なかでも銀座、丸の内、日本橋など東京の都市形成史の調査研究を行っている。また、NHK『ブラタモリ』に出演、案内人を8回務めた。近著に『銀座を歩く 四百年の歴史体験』(講談社文庫/2017年)、『川と掘割“20の跡”を辿る江戸東京歴史散歩』(PHP新書/2017年)、『江戸→TOKYOなりたちの教科書1、2、3、4』(淡交社/2017年・2018年・2019年)、『地形から読みとく都市デザイン』(学芸出版社/2019年)がある。

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