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新型コロナに漢方薬が効く!?――いま漢方医療に注目が集まる理由(3/3ページ)

杉 幹雄杉 幹雄

2020/08/19

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現代にも通用する漢方――広がる間違った漢方の情報

当然のことながら、書かれている内容は現代にも通じています。例えば、身近な漢方薬の1つで、風邪をひいたときなどに服用される方も多く、皆さんもご存じの「葛根湯(かっこんとう)」は『傷寒論』に書かれてある処方です。

そのほかにもアレルギー性鼻炎の時に用いる「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」や、小児の高熱のときに効果がある「麻黄湯(まおうとう)」も同様です。このように2000年前に作られた処方が今も役立っています。

『傷寒論』に記される漢方薬は病気を起こす身体の状況に依存しています。このため太陽病期と呼ばれる風邪の初期には葛根湯や麻黄湯が効く場面が多くなってきます。

一方、長期のアレルギー性鼻炎でも小青竜湯を服用することはありますが、こうした場合はこれだけで治ることは稀です。長期のアレルギー性鼻炎は、胸脇苦満や胃熱がある少陽病的な身体になっているため、解毒症体質を改善する荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)の併用も必要になります。このように『傷寒論』に書かれているのは病気の諸症状に対応するだけはなく、その根源にある臓器へのアプローチ方法まで記されているのです。

こうしたお話をすれば『傷寒論』がいかに優れた本であるのか、ご理解いただけると思います。しかし、『傷寒論』の内容を理解できるまでは、それ相応の時間を必要とし、私自身も、10年以上の年月を必要としました。

前述したように、これまでの西洋医療一辺倒から、漢方に対する関心も高く、そうした治療を望む方が増えています。しかし、実際に処方されている漢方や、ネットの情報を見ると間違いが多いのが現実です。

そこでここでは皆さんに漢方医学の本当の姿、漢方医療と西洋医療の組み合わせによる医療について少しでも知っていただきたいとい思います。今後のコラムは、ごく一般的なことに加えて、現代の物理理論や数理学を使いながら、より深く漢方医学に迫っていこうと考えています。

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この記事を書いた人

すぎ内科クリニック院長

1959年東京生まれ。85年昭和大学医学部卒業。国立埼玉病院、常盤台病院、荏原ホームケアクリニックなどを経て、2010年に東京・両国に「すぎ内科クリニック」を開業。1975年大塚敬節先生の漢方治療を受け、漢方と出会ったことをきっかけに、80年北里大学東洋医学研究所セミナーに参加。87年温知堂 矢数医院にて漢方外来診療を学ぶ。88年整体師 森一子氏に師事し「ゆがみの診察と治療」、89年「鍼灸師 谷佳子氏に師事し「鍼治療と気の流れの診察方法」を学ぶ。97年から約150種類の漢方薬草を揃え漢方治療、98年からは薬草の効力別体配置図と効力の解析を研究。クリニックでは漢方内科治療と一般内科治療の併用治療を行っている。

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