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新型コロナに漢方薬が効く!?――いま漢方医療に注目が集まる理由(2/3ページ)

杉 幹雄杉 幹雄

2020/08/19

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私にとっての漢方医学

私は医師になって30年以上経ちましたが、自身が医療の道への方向を向けたのは漢方医学がきっかけでした。私と漢方の出合いは幼少のことでした。幼かった私は病弱だったため、祖母が日本東洋医学会創立などを主導し、現代の漢方医学の基礎をつくったともいわれる大塚敬節先生の知り合いだったことから、先生の治療を受けられたのです。大塚先生の指導で、漢方薬を飲み徐々に病弱な体質が改善、学生時代には友人とアイドルのコンサートに行ったり、普通の学生生活が送れるようになりました。こうした生活ができたのは漢方医学の力によるものでした。

また、私の家系は祖父と母が歯科医だったことから、学生のころの私は「歯科医になるものだ」と漠然と考えていました。しかし、ある女性との出会いによって、大学受験を歯学部だけでなく医学部も受けてみようという思いを持つようになります。そして、その入試の帰り道に立ち寄った神保町の三省堂書店初めて手にした漢方の本が、漢方の原点といえる大塚先生の著書『臨床応用 傷寒論解説』でした。こうした出会いやつながりが、漢方医学を学ぶきっかけになり、今につながってします。

2000年前に記された漢方医学の教科書『傷寒論』とは?


Hanabishi / CC BY-SA

漢方医学はおそらく3000年以上の歴史があると思われ、その間に発行された本は1万冊を有に超えるに違いありません。そのすべてを読むだけでも人生が終わってしまうことでしょう。そこで漢方医学を学ぶにはよりよい教科書選びが重要になります。

そんな存在になる本が『傷寒論』です。この本は今から2000年前、ちょうど、聖書が書き記されているころにできた本です。日本に入って来たのが今から700年前、1300年頃、鎌倉時代末期のことでした。

『傷寒論』については江戸時代のほとんどの医師が『傷寒論』を「最も大切な漢方医学の本」と指摘。その重要性を話していることからも、これ以上の漢方医学を説明する本はないと思われます。加えて、前出の大塚敬節先生も『臨床応用傷寒論解説』に「古人は漢方医学の研究は傷寒論に始まり傷寒論に終わる」と序文に記しており、漢方医学では最も大切な本です。

とはいえ、『傷寒論』を解読して自分の漢方治療に役立てることに関しては、非常に難しいものです。何しろその内容が難しいのです。そもそも漢文で書かれているうえに、その内容は発病から死までの色々な経過が書かれています。『傷寒論』という本では「病気のすべてを把握してその変遷についてもすべてをつかむ必要」があります。

逆に考えれば、一般の書店で購入できるすぐに手に入る新しい簡単な病名投与の漢方の本は『傷寒論』を前にすれば、すぐに役に立たなくなるものになります。そして、この『傷寒論』がわかり始めると、どんな病気を前にしたときでも、その内容に照らせば、何らかの対応方法をつかむことに役に立つ――そんな本なのです。

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この記事を書いた人

すぎ内科クリニック院長

1959年東京生まれ。85年昭和大学医学部卒業。国立埼玉病院、常盤台病院、荏原ホームケアクリニックなどを経て、2010年に東京・両国に「すぎ内科クリニック」を開業。1975年大塚敬節先生の漢方治療を受け、漢方と出会ったことをきっかけに、80年北里大学東洋医学研究所セミナーに参加。87年温知堂 矢数医院にて漢方外来診療を学ぶ。88年整体師 森一子氏に師事し「ゆがみの診察と治療」、89年「鍼灸師 谷佳子氏に師事し「鍼治療と気の流れの診察方法」を学ぶ。97年から約150種類の漢方薬草を揃え漢方治療、98年からは薬草の効力別体配置図と効力の解析を研究。クリニックでは漢方内科治療と一般内科治療の併用治療を行っている。

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