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ファミリー向け分譲マンションに特化した不動産投資法――分譲マンション投資のデメリットに対する見解について(2/3ページ)

横山 顕吾横山 顕吾

2021/10/20

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分譲マンションの大規模修繕

2つ目は、修繕積立金についてです。

修繕積立金は、将来の大規模修繕を行うために毎月積み立てるものです。大規模修繕は分譲マンションだけでなく賃貸アパート・マンションも必ず実施します。にもかかわらず、賃貸アパート・マンションに修繕積立金を積み立てる仕組みがないことの方が問題だと私は考えています。毎月相当額の修繕積立金を積み立てている方がよっぽど健全なのです。

以上から、建物管理費・修繕積立金という経費がかかるのは、建物を維持していくために必要なものであって、逆に「建物管理や修繕積立金がない方が心配」というのが、私の見解になります。

次に「分譲マンションの場合、自分の意思だけでは大規模修繕、建て替えなどはもちろん、さまざまな事案を自分で決めることができない」というデメリットについてです。

確かに、マンションの一区分所有者に過ぎない場合は、決定権としては総会の議決権行使しかなく、さまざまな事案について自分で決めることも発注することもできません。しかし、一般的にさまざまなトラブルについては、分譲マンション管理会社(自分の部屋の賃貸管理を委託している賃貸管理会社ではありません)が対応してくれます。

例えば、漏水事故などの緊急対応では、マンション管理組合と分譲マンション管理会社との間で締結している管理委託契約書にて「緊急に行う業務については、管理組合の承認を受けないで実施することができる。ただし管理会社は、速やかに書面をもってその業務内容及びその実施に要した費用を管理組合に通知しなければならない」とあります。

緊急事態でない場合は、判断を下すのはマンションの役員会(理事会)になります。理事会には年1回開催される通常総会で予算が与えられます。管理会社や住民からの提案などがあり、予算の範囲内であれば、理事会の決議で対応が可能です。

急ぐ事案や理事会で判断しなくてもよい軽微な事案であれば、理事長だけの決済で対応できます。支出を伴う事案の場合は、理事長に加え会計担当理事の承認が必要な場合が多く、理事長独断の抑止力になります。そして、理事長判断で行ったことについては、次回の理事会で報告をします。

そして任期の1年が経過すると、理事会で行った事業や会計については毎年1回の通常総会で全組合員(所有者)に報告します。

この理事会の役員は、区分所有者でなければなれません。区分所有者の大多数は、投資用マンションでなければ「一生に一度のマイホーム」として実際に住んでおり、資産を維持したい気持ちが強い方が多いです。また、社会的地位の高い方や弁護士などの難関国家資格者も居住している可能性が高く、いろんな視点からの意見が出てくることもあります。分譲マンションは、そういった十人十色の住民の意見を取り入れることができます。

住民自治がうまく機能しているマンションであれば、賃貸アパート・マンションのようにワンオーナーで決めるより、住民間で多くの意見が出てくる方が優れた結論が出る可能性が高いです。

賃貸経営者として優れた判断力を有している方であれば、確かに自分の意見がすぐに通らないことはマイナスかもしれません。しかし、管理を賃貸管理会社に丸投げしているのならば、オーナー一人で判断するより多くの人の意見を聞いたうえで決断する方が、正しい結論になるように私は思います。

理事会の役員が信用できる方々であれば、自ら関与しなくても「よい管理」をしてくれます。もしそうでない理事会であったり、自分の意見を通したいと考えたりするなら、自ら役員に立候補すればいいです。

以上より「分譲マンションは自分だけで決断できない」といわれるデメリットについては、確かに「迅速性がない」というマイナス面はありますが、「住民のさまざまな意見から判断できる」というプラス面の方が大きいというのが私の見解です。

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この記事を書いた人

マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、賃貸経営アドバイザー、防火管理者、損害保険募集人

1970年岡山市生まれ。筑波大学体育専門学群卒業後、転職を繰り返し、6つ目の勤務先として分譲マンション管理会社に就職。2008年から一般財団法人日本不動産コニュニティー(J-REC)広島支部長を務め、12年に投資用分譲マンション2戸を取得。17年に区分マンション所有に特化した専業家主へ転身。趣味はリフォーム、ラグビー観戦。

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