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物件・部屋の取り合い、縄張り争い…「仁義なき戦い」はもう古い 賃貸住宅オーナーと不動産会社の新たな関係性(1/3ページ)

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写真/左 廣⽥ 裕司さん・右 渡邊 浩滋さん 取材/尾崎 光 写真・⽂/編集部 

賃貸住宅オーナーと不動産会社の関係ーーそれは永遠のテーマである。何を重要視したらいいのか、何を気をつけるべきか。オーナーで不動産会社での経験や知識も持つ廣⽥裕司さんと、同じくオーナーで、オーナー専門の税理⼠・司法書⼠として活躍している渡邊浩滋さんに話を聞いた。

取った、取られた…不動産会社の対⽴はオーナーを苦しめる

——お⼆⼈の思う不動産会社の在り⽅、役割、これからのイメージを教えていただけますか。

渡邊:昔はしがらみなどが多かったのかなと思っています。縄張り争いみたいな……。「この物件はウチが管理しているんだからウチだけで募集します。もちろん⼿数料は両⼿でもらいます」など当たり前にありました。でもいまはそれをやっていると、⼊居付けがなかなかできないなど不動産会社⾃体困ることも増えてきたんですよね。これからは、オーナーや⼊居者さん⽬線だったり、透明性のある流れが必要だと思います。


渡邊 浩滋(わたなべ こうじ)/渡邊浩滋総合事務所 税理⼠・司法書⼠
⼤学在学中に司法書⼠試験に合格。⼤学卒業後総合商社に⼊社。法務部にて契約管理、担保管理、債権回収などを担当。商社を退職後、税理⼠試験に合格。その頃、実家のアパート経営(5棟、全86 室)が危機的状況であることが発覚。経営を⽴て直すために⾃ら経営を引き継ぎ、危機的状況から脱出する。資産税専⾨の税理⼠法⼈に勤務した後、2011年12⽉、独⽴開業。税理⼠の視点と⼤家の視点からアパート経営を⽀援するために活動し、税理⼠・司法書⼠のワンストップサービスを提供している。

廣⽥:不動産会社の間では、物件やオーナーを取った、取られたみたいな話はありますね。ただ、変わりつつあるところもあるんですよ。不動産会社も代替わりして、息⼦さんが継いだらいい社⾵に変わってきたという話も聞きます。反対に悪くなった、なんて話もありましたけど(笑)。


廣⽥ 裕司(ひろた ゆうじ)/「合同会社アップ」代表、「⾏動する⼤家さんの会」代表
妻の実家の賃貸事業を引き継ぎ、賃貸経営に関わるようになる。サラリーマン時代の経験を活かし、原状回復費の低減、稼働率アップに成功。賃貸経営での経験をベースにセミナー講師としても活動。2014年⼤家仲間と⼀緒に、管理会社「みまもルーム」設⽴に参加。その後、⼤家さんとしての経験、不動産業者としての経験を活かし、⼤家さんの賃貸経営をサポートする会社「合同会社アップ」を設⽴。

渡邊:いまは管理と客付けをセットでやっている不動産会社も多く、客付けが強い不動産会社がオーナーには⼈気だ、という⾵潮ですよね。私は、そういった不動産会社の格差みたいなものができないように、管理会社はもっと管理に専念すればいいと思うし、客付けだけに特化している不動産会社があってもいいと思います。オーナーに寄り添って、物件を理解し、最適なアドバイスができる不動産会社が増えれば嬉しいですね。

——不動産会社同⼠が対⽴するのではなく、協⼒することがオーナーを助けることにもなりますね。

渡邊:オーナーをやっていて嫌なのは、「募集をお願いします」というと、「じゃ、うちで決めたらこの部屋だけ管理させてください」というもの。それこそ物件の中で部屋の取り合い、縄張り争いです。オーナーとしては、部屋ごとの管理がバラバラになると、建物全体を⾒てくれる⼈がいなくなっちゃうんですよ。もちろん、オーナー⾃⾝で管理すればいいのですが、私のように本業があればできない場合もありますよね。

廣⽥:管理会社の登録義務化もありますし、不動産会社という⼤きい括りから、仲介業務、管理業務、それぞれの強みでやっていくようになれば不動産会社同⼠の協⼒体制もできると思います。

※ 「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(20年6⽉成⽴)。賃貸住宅管理業を営む者に係る登録制度を設けることで、「管理業務の適正な運営」と「借主と貸主の利益保護」を図るための法律

そして、昨今は⼊居希望者さんが不動産会社に⾏きたくないという現状があります。コロナ禍ということもあるでしょうが、無駄を省くという考え⽅が広まっているのではないでしょうか。リクルート住まいカンパニーが出している情報では、不動産会社店舗への訪問数が、19年度は平均1.5店舗で過去最少だったと。

内⾒では、不動産会社へ訪問せず、現地集合・現地解散ということも多くなっていると聞きます。⾏かなくていいなら⾏きたくない、というのが⼊居者さんの本⾳なんでしょうね。さらに、IT重説や、VR内⾒などの⾮対⾯接客も必要です。不動産会社として、この波に乗らないとやっていけなくなってしまうのではないでしょうか。

渡邊:不動産会社のIT化は避けられないことですね。どんな業界でも、⾮効率なやり⽅はどんどん淘汰されていく。不動産会社は、ITなどで効率化していかないと従業員も疲弊してしまう。オーナーの要望も聞きながらいまのように経営していると必ず⽴ち⾏かなくなってしまいます。そのことをオーナーが理解することも⼤事ですし、不動産会社としての進化、変⾰が求められている。いままでがこうだったからこうするのがあたりまえなど、古い慣習は壊していくべきです。それができない会社は、なぜか、新しいことへのリスクはたくさん思いつくのに、メリットを⾒出せない。

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