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事故物件だけではない、賃貸経営で起こりうる「事故」――もしも入居者が逮捕されたら(2/3ページ)

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逮捕時点で一方的に契約解除できる場合もある?

一方的な契約解除、すなわち無催告での解除はどうだろうか。オーナー側として、まだ入居者の有罪が確定しない段階であっても、「やったことは明らか。こんな人との契約は一刻も早く解除したい」という場合もあるかもしれない。

このとき、必要とされている主な条件は2つだ。ひとつは、契約内容に、解除要件と併せて無催告解除の可能性が盛り込まれていること。さらには、ほかの入居者への影響だ。

たとえば、「入居者さんが隣の部屋に忍び込んでお金を盗もうとした。見つかったため逃げようと暴力を振るい、隣の入居者さんに怪我をさせた」は、他の入居者の平穏な生活を害するという意味で非常に影響が大きく、オーナーとの信頼関係を破壊したと認めるに十分足りるはずだ。

加えて、そこに「物件内で犯罪行為、公序良俗に反する行為をしてはならない」旨の約定があれば、即刻契約解除したいオーナーの意志を妨げる方に無理があるといえる。

では、「入居者が部屋でわいせつな映像を編集し、ネット配信していた」はどうだろうか。当然、信頼関係の破壊とみる意見もあるが、異論も多そうだ。独断は禁物である。

目指すべきは合意解除

とはいっても、「逮捕=事実上罪の確定」といった状況は少なくない。また、容疑内容が、オーナーとして「とてもこの人には今後物件に住み続けてもらいたくない」ということも多いだろう。さらには、そもそも逮捕以前から暮らしぶりに問題のある人だったというケースも“逮捕事故”ではよく聞かれる。

そういった場合、オーナーが目指すべきは「合意解除」だ。オーナー、入居者、双方合意のもとでのスームスな契約解除を目指すしかない

合意解除を目指すうえで、大事なのがスピード。できれば、取り調べのため入居者が警察に勾留されている間に、関係者として面会し、退去等の合意を取りつける。賃貸借契約書などの証拠書類を示せば、オーナーは通常面会を認められる。

なお、警察の取り調べが終わり、起訴されてからは拘置所での面会となるが、タイミングを逃し、入居者が刑務所に入ってしまうと、弁護士を通さなければ所在を知ることも難しくなる。同様に、最初の勾留段階でも、場合によっては接見禁止の措置がとられることがあり、弁護士を通しての話し合いが必要となる。

面会の際は、「解約と部屋の明け渡し」「退去に関わっての金銭の精算」「残置物の処分」、この3つの合意を目指すため、それぞれの合意書面を用意して臨むことが肝要だ。残置物に関しては、所有権を放棄してもらい、オーナーが自由に処分できるようにするのが理想である。入居者にアテがあれば、家族などに引き取ってもらう約束を交わすのはもちろんだが、その場合は、当の引き取り手とオーナーとの確実な合意と、綿密なすり合わせも大事になってくる。

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