賃借人が暴力団組員だった場合

拳銃

すでに入居者がいる投資物件を購入し、不動産投資を始めるという時にすでに居住している賃借人が実は暴力団だったという場合もあります。 このような時、オーナーさんはどのような対策がとれるのか判例を紹介しながらご説明します。

1、大阪地裁平成6年10月31日
前所有者から買い受けたビルの居住者に、適法に転貸借をしている居住者がいたが、実は転借人会社の代表者が暴力団であり、この事実を賃借人も知っていたという事実関係、後に発砲事件の現場となった場合には賃貸借契約の解除を認めた事件
この事件は、暴力団が居住しているというだけでなく、発砲事件まで生じたため危険行為条項の趣旨違反として信頼関係の破壊を認め、解除が成立した事案です。
2、東京地裁平成7年10月11日
賃貸借契約では、物産会社の事務所として契約しているにもかかわらず、実態は暴力団事務所であり、抗争によりドアに銃弾3発が打ち込まれた事案につき、賃貸借契約の解除を認めた事件
この事件においては、本来の使用目的に反する約定違反と発砲事件が生じたことにより信頼関係の破壊を認め、解除が成立した事案です。
3、東京地裁平成9年10月20日
賃借人が暴力団組員であることを知らないで賃貸中のマンションを購入した買主が、仲介業者に対して、要素の錯誤を理由とした錯誤無効を主張したが、認められなかった事件
これは、暴力団が賃借人であったとしても、賃借建物を組事務所として公然と使用している、抗争事件が起きた、住人や管理人などに暴力団を背景に威圧的な態度をとり他の住人の住環境が阻害されているなどの状況が起きていない場合では、ただ単に暴力団が賃借人というだけでは錯誤無効により売買契約の無効を主張することはできないと買受人の主張を退けた事案です。

このほかにも、暴力団が賃借人であるのは他の居住者にとって隠れた瑕疵として、賃貸人に対して近隣居住者の家賃減額を命じた判決などがあります。
このように暴力団が入居者であった場合、抗争による生命の危険、他の居住者からの家賃減額、不利な契約条項の締結など不利益が多いことは裁判所も認めています。しかし、実際に問題が起きないと信頼関係が破壊されたとまでは言えないため契約解除することもできない可能性があります。

そこで、昨今では賃貸借契約の中に暴力団排除条項が記載されるようになってきました。
暴力団排除条項は、国土交通省にモデル条項が載っていますが、①反社会的勢力の排除に関する規定(反社会的勢力でないことの確約等)、②禁止又は制限行為に関する規定、③無催告解除に関する規定の3段階での条項となっております。
このような条項を契約書に入れておくと、賃借人や入居者が暴力団関係者であるという事実のみをもって、賃貸借契約を無催告解除ができ、賃借人や入居者を退去させることができます。

ただし、契約書の条項の文言があいまいであったり不明瞭・不正確であったりすると、当該条項を適用できず泣き寝入りするというリスクを負うことになります。

したがって、契約書の作成など一度弁護士に相談し確認してもらうのも重要なリスク軽減につながります。

この記事のコラムニスト

森田雅也
森田雅也(弁護士)
弁護士法人法律事務所オーセンス 弁護士(東京弁護士会所属)。
上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。
[著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。
[担当]契約書作成
森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。