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賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

文/真板 貴幸

BOOK Review――この1冊 『賃貸の新しい夜明け』(2/2ページ)

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『賃貸の新しい夜明け』だ。

世の中には不動産投資や賃貸経営にまつわるノウハウ本は数多くある。しかしこの本はいわゆるそういったノウハウ本ではない。

初版は2015年の8月。すでに5年前の本となるが、現役オーナーはもちろん、これから不動産投資、賃貸経営を始めたいと思っている人には特に読んでほしい。

なぜなら本書に貫かれているテーマには、「入居者にとっての良質な住環境」という、賃貸経営を行ううえでの最も大切なエッセンスが封じこまれているからだ。

「住まいと入居者」「オーナーと入居者」という関係性を説いたものは数多くある。しかし「入居者と入居者」という観点から深掘りした賃貸経営に関する書籍はほとんどないといっていい。そしてオーナーとして、どうすれば入居者のために良質な住環境を提供できるかの方法の一つとして「再契約型定期借家契約」が提案されている。

入居希望者は部屋探しのとき、立地も物件も気に入った場合、無条件ですぐに契約するだろうか。

おそらく大半の人は、隣にどんな人が住んでいるかを不動産会社に確認するはずだ。知らずに入居して、隣がいつも近所迷惑になるような行為をする人であったら、更新を待たずに出ていくことを考えるだろう。クレームを言うことで余計な揉めごとに巻き込まれたくないからだ。実際にそういった事件も多い。

そこで抑止力となるのが再契約型定期借家契約だ。

契約の際、居住中に何か問題を起こしたときは更新しない旨を伝えることで、入居者それぞれが集合住宅における共同体の一員としての意識を高め、お互いに気持ちよく住むことができる。万が一、トラブルを起こすような人がいれば更新されないので、住居が良質な入居者で満たされ、いつまでも安心して住むことができる。普通に住んでいれば更新できるので入居者にデメリットはない。

そしてこれはオーナーにとって、物件を守るうえでの防御策になる。悪質な入居者が1人でもいると、良質な入居者は逃げ、空室が増えてしまうという悪循環を防ぐことができるからだ。

どんなにいい物件でも、入居者がいなければすべては絵に描いた餅にすぎない。空室が増えれば収入は減り、良質な住環境を提供するための資金も枯渇、やがては「貧すれば鈍する」といった状態となる。

冒頭のフレーズに戻る。

「賃貸経営とは何か?」

その答えは、きっと本書にあるはずだ。

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この記事を書いた人

ウチコミ!タイムズ「BOOK Review――この1冊」担当編集

ウチコミ!タイムズ 編集部員が「これは!」という本をピックアップ。住まいや不動産に関する本はもちろんのこと、話題の書籍やマニアックなものまで、あらゆるジャンルの本を紹介していきます。今日も、そして明日も、きっといい本に出合えますように。

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