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賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

文/真板 貴幸

BOOK Review――この1冊 『賃貸の新しい夜明け』(1/2ページ)

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『賃貸の新しい夜明け』 沖野元・林浩一 著/週刊住宅新聞社 刊(QP books)/1500円+税

「賃貸経営とは何か?」 

中長期的にインカムゲイン(家賃収入)を得ること、もしくは出口戦略を設定し、キャピタルゲイン(売却益)を目的にするオーナーもいるだろう。このように賃貸経営をするオーナー人それぞれ、そのゴールは違う。

しかし大前提として、入居者がいなければ投資、経営として成り立たないのが賃貸経営だ。アパート・マンションを建てて「はい、終了」、あとは左うちわで悠々自適といった時代は確実に終わった。

世の中を見渡せば、その理由は簡単に理解できる。人口ボリュームの頂点にあった団塊世代は高度経済長の波とともに核家族化し、その子どもたちである団塊世代ジュニアが単身であった頃、学生と社会人はあふれんばかりで、誰もが部屋を探していた。

時が経ち、少子高齢、人口減少はとどまることを知らず、はたまた住宅ローンの完済年齢は健康寿命を超えるなど、住まいを取り巻く環境はすっかり様変わりした。当然、そのマーケットに対応するためには賃貸住宅を経営するにも努力と工夫、そして差別化が必要になってくる。

もはや、賃貸経営は不労所得ではないということだ。

土地、建物、そしてそこに住む人がいてこそ初めて成り立つ商売で、そういった意味ではほかのビジネスとは何ら変わらない。賃貸住宅を営むということは経営であり、ビジネスなのだ。

それでも不労所得という甘い誘惑に駆られ、安易な気持ちで不動産投資を行い、失敗する人は後を絶たない。人は欲に駆られると、そのリスクについては盲目になり、自身の行動を正当化するようになる。そして気づいたときには借金が残り、ニッチもサッチもいかなくなる。

新型コロナはある意味、今日を生きる私たちに「住まいとは何か」「働くこととは何か」「お金とは何か」を強烈に問いかけている。そしてこのような時代には、さらなる甘いワナが仕掛けられる。

「今回のような予測できない事態にも対応できるよう、副収入を確保しておくべきです」――もしあなたが、こんなフレーズで不動産投資を勧められたなら判子を押す前に、まずこの本を読むことをおすすめする。

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この記事を書いた人

ウチコミ!タイムズ「BOOK Review――この1冊」担当編集

ウチコミ!タイムズ 編集部員が「これは!」という本をピックアップ。住まいや不動産に関する本はもちろんのこと、話題の書籍やマニアックなものまで、あらゆるジャンルの本を紹介していきます。今日も、そして明日も、きっといい本に出合えますように。

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