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2つの伊達家①――仙台・伊達家、鎌倉時代から続く名門を飛躍させた家祖・朝宗から独眼竜・政宗、幕末まで(1/2ページ)

菊地浩之菊地浩之

2021/10/10

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仙台城大手門脇櫓(おおてもんわきやぐら)/©︎mtaira・123RF

源頼朝に従った家祖・朝宗、9代目は足利義満のおじ

NHK大河ドラマ『青天を衝け』で渋沢栄一が大蔵省に出仕する。その時、大蔵省のトップは、元伊予宇和島藩主・伊達宗城(むねなり、1818~1892/菅原大吉)だった。おそらく多くの方は目に留めていないだろうが、パリ在住の徳川昭武(演:板垣李光人)に帰国命令の文書を発したのもこの御仁である。

というわけで、伊達家について述べていきたいのだが、伊達家といえば、中興の祖・伊達政宗の話をしない訳にはいかない。

伊達家は、鎌倉時代から続く東北の名門で、室町時代に奥州の一大勢力を築き、奥州探題に任じられた。伊達家の家祖・伊達朝宗(ともむね)は常陸国真壁郡伊佐荘中村(茨城県筑西市)に住み、伊佐または中村を名乗っていた。源頼朝の奥州藤原氏征伐に従って功績を挙げ、陸奥国伊達郡(福島県伊達市)の地頭職を与えられ、伊達姓を名乗った。


伊達朝宗/Public domain, via Wikimedia Commons

9代・伊達政宗(戦国時代の政宗とは同名異人)は、正室が足利義満の生母と姉妹であったことから、その庇護を受けて亘理(わたり)、宇田、黒川、名取、宮城の諸郡にまで勢力を伸ばし、奥州の一大勢力となった。

14代・伊達稙宗(たねむね)は陸奥守護職に任じられた。従来、陸奥は守護非設置の国であったから、事実上の奥州の支配者として室町幕府から認められたことになる。また、稙宗は分国法「塵芥集(じんかいしゅう)」を定めて領国経営の基礎を固め、大崎地方まで所領を拡大した。

野心に燃えた、戦国武将・伊達政宗


伊達政宗公騎馬像(仙台城跡)/©︎tonarinokeroro・123RF

伊達家17代目の当主にして、初代仙台藩主・伊達政宗(1567~1636)は出羽米沢(山形県米沢市)に生まれた。政宗といえば仙台のイメージが強いが、実は山形県生まれなのである(祖父が米沢に拠点を移したからである)。

母・義姫(出羽最上の領主・最上[もがみ]義守の女)が妊娠中、老僧が夢枕に立って「梵天(ぼんてん)を胎育なさるように」と告げたため、幼名を梵天丸と名付けられた。6歳にして疱瘡(ほうそう)にかかって右目を失明し、容姿のコンプレックスに悩まされるが、唐の国に李克用という隻眼の勇将が「独眼竜」と名乗って、黒衣の兵を率いた故事を聞き、自らも独眼竜を名乗ったという。

母・義姫は醜悪な梵天丸を嫌って、弟・竺丸(じくまる、のちの小次郎)の家督相続を願い、家中の一部に同調する動きが出てきた。そこで、父・輝宗は10歳で梵天丸を元服させると、勇名で名高い先祖・政宗の名を授け、梵天丸こそ伊達家の後継者であることを内外に示した。

政宗は畠山家、芦名家など近隣の有力者を攻め滅ぼし、芦名家の居城・黒川城を若松(福島県会津若松市)と改名して本拠地とし、奥州に一大勢力を築いた。

この頃、豊臣秀吉が天下統一を着々と進めており、天正16(1588)年には徳川家康を介して伊達政宗に近隣諸氏との争いを止めるように勧告し、翌天正17年には前田利家を介して会津の芦名家攻略に抗議している。政宗は秀吉への弁明のため小田原に参陣するが、家中の意見がまとまらず、大幅に遅延してしまう。政宗は死を覚悟したが、秀吉は政宗を赦し、寛容さを見せつけた。ただし、会津攻めの非を問われて会津周辺の所領は没収され、政宗は居城を再び米沢に戻すことになる。

天正19年、政宗は先祖伝来の地・伊達郡ならびに置賜、信夫、安達、田村、刈田の6郡(山形県南部から福島県北部)72万石を没収され、代わりに桃生、牡鹿、磐井、本吉、気仙、胆沢、江刺、加美、玉造、栗原、志田、遠田、柴田、伊具、亘理、名取、宇田、黒川(宮城県および岩手県南部)58万石を与えられた。

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この記事を書いた人

1963年北海道生まれ。国学院大学経済学部を卒業後、ソフトウェア会社に入社。勤務の傍ら、論文・著作を発表。専門は企業集団、企業系列の研究。2005-06年、明治学院大学経済学部非常勤講師を兼務。06年、国学院大学博士(経済学)号を取得。著書に『最新版 日本の15大財閥』『三井・三菱・住友・芙蓉・三和・一勧 日本の六大企業集団』『徳川家臣団の謎』『織田家臣団の謎』(いずれも角川書店)『図ですぐわかる! 日本100大企業の系譜』(メディアファクトリー新書)など多数。

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