ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

スルガ銀行不正融資に見る 賃貸住宅「建築基準法違反」の実態(2/3ページ)

大谷 昭二大谷 昭二

2021/10/08

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

容積率のちょろまかしが不正融資の2割に

スルガ銀行の不正融資の調査の結果、多くは収益物件のなかでもいわゆる「賃貸マンション」に建築基準法に違反した状態であることが分かりました。

実際にあった事例は次のようにものでした。

■ 東京都下の物件
1階駐車場、2~3階を事務所として建築確認申請し、その後1階の駐車場を住居に改築して、すべて「社宅」と変更。そして、社宅からワンルームマンションとして入居者募集した事例

■大阪市内の物件
1階を駐車場として4階建ての共同住宅として建築確認を申請。しかし、実際は5階建てのワンルームマンションとして建設した事例

■兵庫県内の物件
1階を駐車場として4階建ての共同住宅として建築確認を申請。駐車場予定地に部屋を建設し、実際は4階建てのワンルームマンションとした事例

これらの事例に共通しているのは1階を駐車場として建築確認の申請をしておきながら、実際は住居にしてしまうという点です。これらはすべて「容積率超過」にあたります。

ご存じのように容積率は敷地面積に対して建築可能な延床面積を定めたものです。自治体では設定している都市計画の規制のなかで、建築していい建物の建築面積と延べ床面積の割合が制限されています。不動産の取引では、重要事項説明において、この土地は、建蔽率60%、容積率200%といったことが記されます。この制限を超える建物の建築は、特別の緩和措置がない限り建築を許可されません。

しかし、「1階を駐車場」にすることで、この容積率をごまかすことが可能なのです。

容積率は、建築基準法52条に次のように規定されています。

「容積率=延べ床面積÷敷地面積」

しかし、建物は実際には住居として使われていない共有の廊下、エレベーターなどがあり、こうしたところも延べ床面積に加えてしまっては住居して使用できる部分が狭くなってしまいます。そこで建築基準では、共用の廊下、地階、貯水槽設置部分、駐車場、エレベーターなど延べ床面積に含めなくてよい部分があります。

次ページ ▶︎ | 役所はなぜ不正を見抜けないのか 

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事

1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。

ページのトップへ

ウチコミ!