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スルガ銀行不正融資に見る 賃貸住宅「建築基準法違反」の実態(1/3ページ)

大谷 昭二大谷 昭二

2021/10/08

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不正融資に潜む「既存不適格の建物」の存在

スルガ銀行不正融資の問題では、調査が進むにつれて、その内容が明らかになってきています。調停の場ではスルガ銀行も、被害者が示す「不正融資」についてほぼ認めているようです。

しかし、不正融資にもとづく損害賠償を求めても、スルガ銀行はなかなか応じようとはしません。その理由は、損害賠償を求める側に根拠がある賠償金額が示されていないからです。

根深い問題をはらんだスルガ銀行の不正融資――建築基準法の観点から不正融資の実態を検証していきます。

スルガ銀行の不正融資には、現在の建築基準法に適合しない「既存不適格建築物」が一定の割合で存在します。これは建物に相当な知識がなければ、これに気付くことはありません。なかには建物調査をしなければ、分からない事項もあります。こうした物件の建物は、売りたくても売れない。場合によっては入居者募集すらできなくなります。

「大規模修繕が必要な建物」がほとんど

スルガ銀行不正融資対象の多くの収益物件は、築30年経過しています。多くのマンションのトラブルは、築30年を超えたあたりから表面化します。具体的には「防水の劣化」「目地シールの劣化」「コンクリートのアルカリ化」「外壁タイルの剥落」「鉄部の錆の発生」「排水管の目詰まりと劣化」「給水設備の劣化」……と、きりがありません。これらは建物検査をしなければ分かりません。これらの大規模修繕再生には、数千万から億を超える費用がかかります。

しかし、これらの建物を放置した結果、入居者に被害が及んだ場合の損害賠償責任は管理者ではなく、所有者にあることを、賃貸住宅経営を行っている方は肝に銘じておく必要があります。

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この記事を書いた人

NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事

1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。

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