マンション外壁タイル剥離が続発!――その原因とどこまで施工会社に責任を求められるか(2/4ページ)
大谷 昭二
2021/09/08
下地素材と外部環境も原因に
外壁タイルの剥落・剥離問題にはいくつもの要因があると思いますが、基本的には、外壁タイル材料が躯体コンクリート・モルタル塗り・サイディング等を含めたタイルを貼る下地そのものとの間に接着不良(界面破壊)が生じて起因することが一番大きな要因ではないかと思われます。
そもそもタイルとタイルを貼る下地素材とは太陽熱等により受熱した場合、または降雪等により冷却された場合には、各々の膨張伸縮度合いが違ってきます。さらに地震等のような外力が加わった場合にも各々が動きます。(接着剤と非接着材料の接合界面での破壊を界面破壊と呼びます)
そこでそれぞれの素材に種々の力が働いた場合でも、お互いがきちんと接着されているような施工がなされていなければなりません
つまり、タイルの剥離要因にはタイルとタイルを貼る下地素材との接着面での接着強度が重要になってきます。界面破壊を起こさないためは、タイル張り下地面の清掃や下地処理が非常に重要となってきます。
これだけあるタイル剥離の原因
タイル剥離の主な要因は次のようになります。
・下地処理未実施・下地処理不足・コンクリート躯体表面目荒し処理不足
・下地調整モルタルの硬化不良
・下地調整モルタル・タイル貼り付けモルタルの塗厚不足
・伸縮調整用タイル目地の未設置・不適切箇所への設置
コンクリート躯体表面の目荒しも見落とせません。
樹脂塗装を施した型枠材を使用するようになってからタイル剥離事故が増加してきた原因は、コンクリート躯体表面の目荒し処理がなされていないか、躯体コンクリート表面(タイル貼付け面)の鏡面状態が解消されないことによるタイル貼り付けモルタルの接着不足が起因していると思われます。
そこでコンクリート躯体に直接モルタル塗りを施工する場合・タイルを張る場合は、12年に建築工事標準仕様書で決められた仕様である超高圧水洗法等の目荒し処理が必須となってきます。
注意しておきたいのは、通常の清掃レベルのワイヤーブラシ掛け等は下地処理とはみなされません。
マンションやビル等の建物の外壁に陶磁器タイル等を貼った場合、そのタイル等が剥がれてしまうことがあります。施工を入念に行っても剥離がゼロということはありません。
建物の劣化は、建物のある地域・周辺立地・形状・気候・経過年数・建物配置等々によって劣化の状況が変わってきます。また、外壁タイルの剥離については、これらの条件のほかにも施工監理者の技量及びその建物を建てた建設会社の施工管理技術・タイル工事施工会社の技術力・タイル下地の施工精度等によっても大きく変化してきます。
この記事を書いた人
NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事
1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。