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新築マンション価格1億円を突破――その影に日銀とメジャーセブンがあり?(3/5ページ)

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2008年からの世界金融危機(リーマン・ショック)で、新興や中堅のデベロッパーが相次いで行き詰まり、上場企業も含めて10社近くが事実上、マンション市場からの撤退や休止、身売りを余儀なくされた。これによって供給者が減り、都市開発など他の儲かる事業も得意な総合不動産会社の独断場になり、ほぼ寡占的な市場が成立した。

直近の2020年の供給トップ10の顔ぶれは、①プレサンスコーポレーション、②野村不動産、③住友不動産、④三井不動産レジデンシャル、⑤エスリード、⑥あなぶき興産、⑦大和ハウス工業、⑧三菱地所レジデンス、⑨日鉄興和不動産、⑩東急不動産と、メジャーセブンといっても、東急不動産は10位で、大京は18位、東京建物は20位にも入っていない。

1位のプレサンスコーポレーションは(関西系)、あなぶき興産や穴吹興産は四国・西日本系で、首都圏の人にとっては馴染みのない会社だろう。

【表2】2020年売主・事業主別発売戸数(全国上位20社)

出典/不動産経済研究所「2020年の全国マンション市場動向」

メジャーセブンの強さの源泉はどこにあるか

メジャーセブンにとってのライバルは同業だけではなく、そのときどきによって変わる。

インバウンドブームの時期は、都心のマンション適地は、ホテル事業地と競合することが多かったが、新型コロナによってホテル用の土地取得は下火になり、一時期ほどではなくなっている。その一方で、コロナ禍によるテレワークと巣ごもりといったことを背景に郊外のマンション適地が、EC(通信販売)の物流施設や配送拠点の用地と競合。ここで新たな競争が起きているといった具合だ。

それでも日銀の超金融緩和で不動産事業への融資額は史上最高水準にあり、メジャーセブンの中でも土地購入に競り負けないのが、財閥系の三井、住友、三菱といったところ。しかも、この3社は土地を高値で買っても、そのブランド力で強気の価格でも売れる。資金力もあるため、売れ行きが悪くても値引きせずに在庫を長期にわたって抱える体力もある。

加えて、五輪や再開発ブームで建築費が上昇したものの、大手デベロッパーのメジャーセブンはマンション建設工事でもゼネコンとの価格交渉力は強い。逆にゼネコンやマンション建設最大手の長谷工コーポレーションや大手ゼネコンの尻をたたけば、土地情報も入ってくるという塩梅なのだ。

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この記事を書いた人

経済アナリスト

マクロ経済面から経済政策を批評することに定評がある。不動産・株式などの資産市場、国や自治体の財政のバランスシートの分析などに強みを持つ。著書に『若者を喰い物にし続ける社会』(洋泉社)、『世代間最終戦争』(東洋経済新報社)、『地価「最終」暴落』(光文社)などがある。

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