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新築マンション価格1億円を突破――その影に日銀とメジャーセブンがあり?(5/5ページ)

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不動産経済研究所によると、20年度の首都圏の坪単価は90万円を超え、バブル経済ピークの90年度に迫る2番目の高い水準になっている。

インフレ率2%を目指した日銀の低金利政策だったが、この目標を今なお達成できずにいる。しかし、マンション価格に限っては目標達成どころか、マンションの平均価格を億ションへと押し上げた。

そればかりか、今の日銀は超金融緩和で、ローンの金利を下げているだけでない。

金融市場で、国債、社債、リート(J-REIT)、株(ETFなど)の「4点セット」で大量に買いまくる世界で唯一の、そして史上初の稀有なマンモス中央銀行(主要国における対GDP比の中央銀行資産残高において)となった。

メジャーセブンにとっての追い風はまだある。株高などの「資産効果」により、金融資産も増やした富裕層が住宅や不動産投資に前向きになっていることだ。

メジャーセブン7社が日銀から受ける恩恵は、①主要225社(日経平均)に選ばれた銘柄なら自社の株価が安定する、②傘下にリート投資法人があれば、日銀に自社系列リートを買ってもらえる場合もある、③自社の社債も買ってもらえる可能性がある、④日銀が株高、リート高を演出し、その結果生まれる「資産効果」でマンション購入予備軍も増える、などなどメジャーセブンは笑いが止まらないわけだ。

メジャーセブン内で差が出る理由は何か

こうした追い風に乗るメジャーセブンだが、メジャーセブン内にも優劣がある。

その差は主要都市の再開発に関われるか否かによる。こうした再開発には補助金が付きものだ。例えば、東京都心の大手町・丸の内・日本橋・八重洲などで超大型再開発では、1つの再開発プロジェクトで公共的施設の整備など公共貢献をすれば、100~200億円規模の補助金が出ることは珍しくない。この金額は、文化庁の重要文化財保全のために出されている補助金予算を大きく上回る規模なのである。

そのうえ、こうしたプロジェクトでは、容積率ボーナスも得られ、さらに高いビルが建てられる。これに住宅(マンション)を組み合わせて、上に延ばして戸数を増やせば収益性は飛びぬけて高くなる。これこそが雨後のためのタケノコのようにタワマンが次々と建つカラクリの1つで、その結果が供給戸数の差となり、東京建物や大京の順位が他のメジャーセブンと水をあけられている理由になっている。

現在、東京東部の下町に限っただけでも再開発プロジェクトは中央区/月島、江東区/亀戸、江戸川区/小岩・平井、葛飾区/立石、北区/十条などがあり、いずれも昭和の佇まいを今に伝える街並みが残る地域だ。こうした地域で進むジャーセブンも高層住宅建築と再開発は防災・不燃化・道路拡幅事業が再開発事業等とセットで行われている。

そして、メジャーセブン各社は「素敵な新築マンションライフ」「街づくりに貢献」をPRしているがその裏では、「古い町壊し」や「文化財壊し」と地域住民の反発を受ける場合もある。

本来、日銀の低金利政策は住宅ローン金利も下がり住宅購入がしやすくなるはずが、逆に物件価格を押し上げ、新しい街づくりの再開発はどこも似たようなコンセプトで、古い街並み、地域文化の消失を招く結果に――。

日銀とメジャーセブンをはじめとした大手デベロッパーの動きを見ていると、「つくっては壊す」を繰り返す日本の住宅政策の貧しさを感じざるをえない。

 

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この記事を書いた人

経済アナリスト

マクロ経済面から経済政策を批評することに定評がある。不動産・株式などの資産市場、国や自治体の財政のバランスシートの分析などに強みを持つ。著書に『若者を喰い物にし続ける社会』(洋泉社)、『世代間最終戦争』(東洋経済新報社)、『地価「最終」暴落』(光文社)などがある。

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