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持続可能な都市再生は可能か 都心で進む、既存インフラを活用したウォーキングロード化計画(1/3ページ)

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写真/立木 信

鉄道マニアをくすぐる豊洲の廃線鉄橋

東京臨海部の豊洲と晴海を隔てる運河にかかる「晴海橋梁(旧晴海鉄道橋)」が鉄道マニアの間で話題になっている。

晴海橋梁は、かつて造船所のあった豊洲から晴海に向かう春海橋の脇に架かる橋で、東京都港湾局の貨物専用鉄道(晴海線)の廃線後は使われなくなった鉄橋である。

廃線から30余年、赤黒くさび付いた姿、今なお残る線路は鉄道ファン、なかでも廃線マニアのハートをくすぐるらしい。しかし、東京五輪後、この鉄道橋を遊歩道として再活用する工事が動き出している。


工事の進む晴海橋梁 撮影/立木 信

東京都は「海上公園ビジョン」の目玉事業のひとつとして晴海橋梁の遊歩道化を盛り込み、今年度、調査など本格事業化に着手。すでに晴海橋梁のたもとには、詳しい解説の看板も立てられている。

埋め立て地で、戦前は物流や軍需拠点だった晴海は、当時、万博開催も予定されたこともある。戦後はGHQに接収されたが、戻された後は晴海、豊洲周辺には造船所、石炭貯蔵基地、東京電力、東京ガスなどが集積、芝浦方面は湾岸の工業地帯となったため、都の貨物専用線として延伸工事も行われ活用された。最盛期は20キロ前後に延びていたという。高度成長期以降、一時延伸なども検討された。

しかし、貨物輸送の主役が鉄道からトラック輸送となり、1980年代末まで利用されたがついに廃線。豊洲などウォーターフロントの開発が行われるなかでも、そこだけは時間が止まったようにその姿を残していたが、取り壊すのではなく遊歩道として活用されることになったというわけだ。

都心で進む遊歩道計画の目的とは

こうした都内を歩いてめぐる遊歩道の計画は晴海橋梁にとどまらず、京橋~銀座~有楽町~新橋をつなぐ高架の「東京高速道路」(KK線)の空中遊歩道化、旧築地市場の隅田川隣接部分のスーパー堤防と遊歩道をセットにした整備計画。さらに旧築地市場の隣にある浜離宮恩賜庭園の前に設けた防潮堤を遊歩道に改造し、竹芝と連結させるという計画もある。

すでに東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)・竹芝駅からJR浜松町までは、首都高速をまたぐようにつなぐ歩行者用通路が完成しており、ゆくゆくは京橋、有楽町、銀座、新橋、築地、汐留、浜松町、竹芝の各エリアを空中や水辺を歩いて回れる日がやってくる。

都はこうした再開発について「地域の歴史の一端を担ってきた高架自動車道をレガシーとして引き継いだ高架施設が、高架下や周囲の施設との間で、『見る・見られる』の新たな関係を創り出し、新たな人の流れやにぎわい・交流を誘発する」という計画の狙いを明らかにしている。

もちろん、これらの都の事業は相互に関連するため、すべてが整う完成時期は確定していない。しかし、2030年代末ごろには、その活用が始まっているだろう。

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この記事を書いた人

経済アナリスト

マクロ経済面から経済政策を批評することに定評がある。不動産・株式などの資産市場、国や自治体の財政のバランスシートの分析などに強みを持つ。著書に『若者を喰い物にし続ける社会』(洋泉社)、『世代間最終戦争』(東洋経済新報社)、『地価「最終」暴落』(光文社)などがある。

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