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コロナの雲の下にすっぽりと覆われた12カ月――2020年度分の「建築着工統計」(1/2ページ)

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文/朝倉 継道 イメージ/©︎06photo・123RF

新設住宅着工戸数は2年度連続の減少

国土交通省による建築着工統計調査報告の「令和2年度計」分が、この4月末(2021)に公表されている。

令和2年度、すなわち20年度分(20年4月~21年3月)ということで、新型コロナウイルスによる「コロナ禍」のもと、期間全体をすっぽりと覆われた初めての建築着工統計となった格好だ。

数字を見ていきたい。

・20年度の全国の新設住宅着工戸数は 81万2164戸
・前年度比8.1%の減、2年度連続の減少

と、なっている。ちなみに、上記の81万2164という戸数は、はるか1995年度(PDF版報告書にデータが載っている最も古い年度)にまでさかのぼってみても2番目に少ない。では1番目は?というと、09年度の77万5277戸がそれにあたる。3番目が翌10年度で、81万9020戸となっている。

09年度、10年度といえば、リーマンショックの翌年度、翌々年度となる。発端となったアメリカの投資銀行の破綻は08年の秋に起きているが、失業率が大幅に伸びるなど、景気の悪化は年をまたいでから深まっていくかたちとなる。

その2つの年度の間に、今回、20年度が挟まった。リーマンショック同様に、コロナ禍も、建築着工統計に明瞭な足あとを残すことになったといえるだろう。

コロナ禍のもとでの需要の縮小か

利用関係別の数字も見てみよう。20年度の「持家」の新設着工数は、26万3097戸となっている。前年度比7.1%の減。同じく「貸家」は 30万3018戸で、前年度比9.4%の減。

さらに、分譲住宅のうち「マンション」は10万8188戸、前年度比3.1%減。「一戸建住宅」は12万9351戸、前年度比11.5%の減となっている。

以上のとおり、分譲マンションを除いては、明らかにコロナ禍のもとでの需要の縮小、または着工先送りなどの状況が、見てとれる結果となっている。

一方で、目をひく数字が「利用関係別・都道府県別」のところに見えている。このなかの「貸家」の戸数で、東京は前年度比プラス2.3%を示している。

隣接する神奈川(-16.2%)、埼玉(-6.9%)、千葉(-2.8%)が、軒並み耐えきれずに(?)マイナスとなるなかで、東京でのいわゆる収益物件投資が、一定の底堅さを見せるかたちとなっている。

ちなみに、この都道府県別の戸数というのは、特に集合住宅がほとんどを占める貸家の場合、そもそも着工件数が少ないエリアでは、あまりよいデータとはならない。1棟ごとに複数・多数の住戸を抱えているため、少ない棟数の変化でも、数字が大きく変動しやすいためだ。

その点、東京を含めた1都3県などの場合は、ベースとなる着工件数の多さから、1棟ごとの全体への影響が希薄となる。市場の傾向を探るにあたって、一応、参考となるデータを拾えるものとなっている。

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