ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

牧野知弘の「どうなる!? おらが日本」#18 アフター・コロナで躓く オフィスビルマーケット(4/5ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2020/10/16

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

ポスト・コロナ 都心の在り方が変わる

ポスト・コロナ時代において、オフィスはその役割をずいぶん変質させていくのではないか。これまでは全員がひとところに集まって仕事するということが社員たちの意欲を促し、労働生産性を高めるものと考えられてきた。ところが実際にはオフィス床というものが、必ずしも働く場として必要なものではないと分かった瞬間、オフィスの存在意義を問い直されたのがこのコロナ禍だ。オフィスはただ単に時折、社内外の人と会って互いの存在を確認しあうだけの場になっていくことになりそうだ。

これからの多くの企業は一部のヘッドクォーターのみを残して、組織は限りなくバーチャル化していくものと思われる。このようになると、現在都心部で大量に供給されているオフィス床は、無用の長物と化していくことが容易に想像される。あらかじめ各社員の役割が明確に決まっているような事業であれば、オフィスという存在なくしても、事業は十分回っていくからだ。

一方、いくらネット上でつながっているからといって、全員がオンライン上だけですべての事業を遂行していけるとも思えない。そうした意味で、一部の職種ではオフィス床が必要であることに異論はない。

ただ、ポスト・コロナは、都心部の在り方を確実に変えていくことだけは間違いがなさそうだ。多くのオフィスは郊外などのコワーキング施設や企業が独自に展開するサテライトオフィスになっていくだろう。そうしたオフィスは何も高層ビルである必要もない。高層ビルがステータスであった時代はすでに過ぎ去っているのだ。郊外の自然豊かなオフィスで働くのが普通の働き方になってくるだろう。

ポスト・コロナでは都心の在り方そのものが変わる可能性がある/©︎tobusora・123RF

次ページ ▶︎ | 単純な事業企画の方程式は成り立たない 

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

ページのトップへ

ウチコミ!