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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本」#18 アフター・コロナで躓く オフィスビルマーケット(3/5ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2020/10/16

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都心5区 1カ月で2万4000坪の空室

オフィスビルマーケットは、実体経済の好不調に約半年遅れて影響を受けるといわれている。通常の賃貸借契約は、解約する場合には6カ月前に予告をしなければならないので、実際に解約となって空室にカウントされるのは6カ月先になるからだ。また大規模ビルに入居するテナントの多くは定期借家契約で3年から5年の比較的長期の契約を結んでいるところが多い。こうした状況から考えると、オフィスマーケット悪化の予兆が表れてくるのは今年冬以降からになりそうだ。

だがすでに兆候は表れだしている。20年8月の三鬼商事のオフィスマーケットデータによれば、東京都心5区の空室率は3.07%に跳ね上がってしまったのだ。この数値は対前月比で0.3%の上昇だ。三鬼商事のデータベースでは0.1%はおおむね8000坪相当だ。したがってわずか1カ月で2万4000坪相当の空室がエリア内で発生したことになる。これは新宿にある55階建ての超高層ビル新宿三井ビルのオフィステナントがすべていなくなってしまったことに匹敵する。たかが0.3%ではなくこの上昇傾向の速さは大いに気になるところだ。

日本総研の予測では企業従業員の1割がテレワークになった場合、東京都心5区の空室率は15%近くに急上昇し、平均賃料も約2割下落するとしている。これはやや極端な予想にも見えるが、少なくとも分水嶺の4%はそう遠くない時期に突破してもおかしくないと思ったほうがよさそうだ。

気を付けたいのは、やはり人々のマインドがコロナ前とコロナ後では大きくチェンジしたことにある。これまでのいわば常識であった働き方が実は違うのだ、違ってもよいのだ。通勤なんてしなくても仕事はできたんだ、という気付きをオフィスで働くほぼ全員が「共有化」できたところにある。また学生に対するリクルーティングでもこれまでは「渋谷のオフィスで働く」というのは大いなる宣伝効果があったのだが、渋谷のような「密」な場所に毎日通勤することのリスクを避ける気持ちが強くなれば、そもそも渋谷にオフィスを構えることの意味が失われることになるのだ。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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