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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本」#18 アフター・コロナで躓く オフィスビルマーケット(2/5ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2020/10/16

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ドワンゴは在勤恒久化 富士通はオフィス半減

ところが今回のコロナ禍では、すでに業務の大半をテレワーク化して、余分となったオフィス床を減らしていこうという動きが一部で顕在化しはじめている。富士通は23年度までに賃借オフィスの面積を半減させると発表した。ドワンゴは在宅勤務を恒久化するという衝撃的な発表を行った。そのいっぽうで、こうした素早い動きをしているのは、東京の渋谷などにオフィスを構えている新興系のIT企業の動きであって、オフィスマーケットそのものに深刻な影響を及ぼすものではないとの見方もある。


7月6日、2023年までにオフィスの規模を半減すると発表した富士通/©︎tktktk・123RF

さらに一部のデベロッパーからは、コロナ禍が過ぎ去れば、オフィスにはコロナ前と同様に社員が出勤するようになる。それどころか企業は、従業員の感染リスクを極小化するために社員同士のソーシャルディスタンスを保たなければならないので、社員間の机を2メートル以上離すことが必要になる。だからオフィス床を増床するだろうとの楽観的な観測まで出ている。

だが現実、多くの企業では、社内の部署ごとにテレワークができる部署、できない部署に分け、社員の勤務体制をシフト勤務にしていくのが、これからの大きな流れになっている。そして肝心なのはこうした動きがコロナ禍における特別な態勢ではなく、ポスト・コロナ時代においての「通常の勤務体制になる」ということだ。これからは社員の人数分の机や椅子を用意せずにすむことから、オフィス床を極限まで小さくすることができることになる。オフィス賃貸料は企業にとって、人件費に次ぐ重たい固定費である。コロナ禍で業績を落とす企業が多い中で、デベロッパーの思惑通りにオフィス床を唯々諾々と増床するような余裕のあるテナントは少数だろう。ということは、今後オフィスをスリム化する動きは顕著になってくるものと思われる。

人々の働き方の形態そのものが今回のコロナ禍を契機に大きく変わる可能性があるというのが、ポスト・コロナにおける重要な視点なのだ。そうした意味では「結局もとに戻る」という意見は、コロナ禍は一過性の感染症にすぎず、働き方そのものには大きな変化は生まれないという前提に立っていることになる。しかし、そう言っている多くの人たちは実は古くから存在する大企業の役員たちに多いようだ。世の中の変化に鈍感なのは古くて組織の大きな企業の特徴でもある。


コロナ禍により、政府が唱えてきた働き方改革など及びもつかない、「働き方革命」がもたされた/©︎ponsulak・123RF

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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