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損保各社が水害ハザードマップに「水害保険料」を明記!?――さらに見える化が進む水害リスク(2/3ページ)

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災害発生後の生活回復が難しい水害

今年の梅雨では、7月28日に東北地方の美しい河川として有名な最上川が氾濫。川沿いの山形県大江町に避難勧告が出され、そばの町として知られる山形県大石田町も浸水するなどした。こうした水害は温暖化等による気象変動の進行もあって、もはやめずらしいことではなく、主要河川の氾濫はいつ起きても不思議ではない。こうした洪水では、起きた後が大きな問題になる。意外に知られていないが、水害発生後の日常生活の再建の難しさがあるのだ。

被災者の体験を聞くと、「臭くて自宅にとても住めない」というマスコミではあまり取り上げられることのない声を耳にする。また、浸水した家屋の床上の泥を運び出す作業を業者に頼むと、「数百万円程度はかかります」と言われた被災者も少なくない。都市部から知らない業者がきて高額受注していったケースも散見される。

文明社会発展の歴史は治水との闘い

人類の文明社会発展の歴史は治水との闘いでもあったともいえるのだが、太古の昔からの川は大雨の度に流路を変えて蛇行しながら海に注いだ。中でも日本の河川は急流が多く多雨な日本では、時代とともに、流路を直線にして堤防を築き、新田を開発。居住地を作ってきた。しかしながら、水害の備えは完ぺきではなかった。

また、海も干拓して農地を造成、食糧増産とともに、日本では人口が爆発的に増えていった。これは近代に入っても変わることなく、ややもすると、埋め立て地もダムも「乱造」され、地域の景気対策として「政府投資の切り札」が治水、砂防を目的とした公共事業(土木工事)になってきた。こうした公共工事は大自然を改造することの弊害も指摘されたが、国民の「安心と安全」が最優先されてきたはずだった。

日本の人口が明治維新時の約3倍に増え、野山を切り開いて宅地化してきたことで、災害発生と隣り合わせの、「限界居住エリア」にも人は集団で住み始めた。しかし、少子高齢化が進んだ現代では、こうした状況が変わってきた。地方では過疎化が進み、公共工事で追加の洪水対策を施しても、大規模に浸水した地帯の分譲地が売れなくってきているのだ。

例えば、中国。四国地方最大の都市の広島市は戦後、人口100万人を超す政令指定都市に発展したが、太田川を中心とする旧市街地(平野部)は狭く、都市開発は北側の中国山地方面に向かい、丘陵や山岳地帯に大型の住宅地が切り開かれていった。そんな中で起きたのが14年8月、18年6月の2度にわたり襲われた豪雨被害である。この2つの災害は防災対策が十分ではなかったと指摘されてきたエリアだ。

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この記事を書いた人

都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナルの集まり。主に東京の湾岸エリアについてフィールドワークを重ねているが、全国各地のほか、アジア・欧米の状況についても明るい。

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