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『モンタナの目撃者』/ふたりの“女性ヒーロー”によるパニック映画とサスペンス映画(2/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2021/08/31

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自然の猛威と暗殺者…複数のテーマが混在

本作にはもう一人、勇敢な女性が登場する。保安官代理イーサンの妻、アリソン(メディナ・センゴア)だ。彼女は妊娠中でまもなく子どもが生まれるのだが、身重の体を苦にもせず、夫を人質にした暗殺者たちと対峙する。アリソンはハンナと同じく森を熟知し、自然の中で暮らす術を身につけていた。彼女は窮地に陥った夫を取り戻すため、持てる力をすべて出し尽くす。

複数の興味深いテーマが盛り込まれており、それらが各登場人物によって同時に描かれてゆくのだが、本作に男性ヒーローが活躍する場はない。森林消防隊員の仲間や警察は状況を把握していないし、保安官補も役に立たない。

対して、二人の暗殺者の力は強大で、ハンナとアリソンをじわじわと追い詰めてゆく。森林火災の猛威も迫る。ハンナとアリソンは、自分の力だけを頼りに進んでゆくしかないというわけだ。

詰まるところ、本作はパニック映画とサスペンス映画の要素を融合したヒーロー映画である。ただし、登場するヒーローは男ではない。ヒーロー=HEROという単語は、もはや男性名詞ではないのだ。

『モンタナの目撃者』
監督・脚本:テイラー・シェリダン
脚本:チャールズ・リービット
出演:アンジェリーナ・ジョリー/ニコラス・ホルト/フィン・リトル/エイダン・ギレン/メディナ・センゴア/ジョン・バーンサル
配給:ワーナー・ブラザース映画
9月3日より公開
公式HP:https://wwws.warnerbros.co.jp/mokugekisha/

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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