子どもを危ない建物に住まわせるな 「築年月」を気にするべき一番重要な理由 (3/4ページ)
朝倉 継道
2021/07/16
築古物件を耐震改修せず、表面だけを「おしゃれ」リフォームするオーナーの罪
さて、ここで長年賃貸住宅市場の周りで仕事をしている私の日頃からの想いを差し挟みたい。
新耐震基準、または00年基準に沿うか、あるいはそれ以上の性能となるよう正しく耐震改修されている場合を除いて、旧耐震基準による建物での賃貸住宅経営は、もう行うべきではないと考える。同じ声はすでに10年以上前から不動産関連業界の一部から聞こえてきてはいるが、賛同の声が響いてくる様子はなく、ほぼかき消されている状態だ。
しかしながら、そうこうしているうちに、新耐震基準さえ今年をもって40年の歴史を重ねることとなった。
旧耐震基準の建物は、「旧」であるだけでなく、間もなくその全てが築後40年を超え、ほぼ老朽物件と化してしまうことにもなるわけだ。そこで見回すと、東京のいわゆる木造住宅密集地域などでは、旧耐震の木造アパートがいまも多数現役で稼働している。
来たる次の首都直下地震など、巨大地震が起これば、これらの多くは倒壊または大破することになるだろう。
東日本大震災による家屋の倒壊/©︎yoshiyayo・123RF
そのあとは、阪神・淡路大震災の例が示すとおり、火災がその場を襲う可能性も少なくない。賃貸住宅の場合、これらは、中に閉じ込められたり、中で動けなくなったりした入居者=客を生きながらに焼く薪になる。そうした悲惨な想定から、賃貸住宅オーナーも、不動産関係者も、決して目を背けるべきではない。
ゆえに、耐震改修は省いたまま、旧耐震基準の築古物件の表面ばかりを「おしゃれに」リフォームし、入居者を募るようなプロジェクトには、まったく賛同できない。
あまつさえ、リフォームによってそもそも乏しい建物の耐震性をさらに損ねたり、リフォームしたことを根拠に、物件の築年月を実際のものではなくリフォーム時点のものに偽ったりするなどの行為は犯罪であると、ここではっきりと申し述べておく。
この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。