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【家族信託活用事例】一般社団法人と信託の組み合わせ――先祖伝来の財産を分散させないで守るために(2/2ページ)

谷口 亨谷口 亨

2020/03/17

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<相談の要点>
・一般社団法人を設立して、長野にある家と土地、収益不動産をすべて信託する。理事は妹にしたい。
・一般社団法人に入る収益の一部を、長男の子に行くようにしたい。
・長男の前妻とその子には、財産を渡したくない。

<提案>

・妹さんを理事に、息子さん2人を社員にした一般社団法人を設立し、長野の資産はすべて社団法人に信託する。
・社団法人の財産の使い道を決めるときに、受益者の中に長男の子の名前を入れ、「その子のために使う」という仕組みを作ります。
・小林さんの預貯金、東京の自宅の一部を遺留分のある次男の子どもたちに生前贈与する。

<提案のポイント>
1)一般社団法人を受託者にするには、設立時社員2名以上/理事1名以上で可能/配当の分配は不可/という条件があれば簡単に設立できます。社員の地位は相続できないので、都合の悪い相続人に社員の地位を相続されることはありません。

2)次男には2人の子どもがいて、1人は現在体調を崩して自宅療養中。社団の名義にすると、自分がもしも将来お金に困ることがあった場合も、お金はもらえないのか不安になっています。父と息子、兄弟の仲が良くても実際に相続の話になると、将来への不安から金銭はできればもらっておきたいとなるものです。
そこで次男の子どもたちには、小林さんの預貯金から非課税枠を使った生前贈与を提案しました。

3)長男の資産に対しては、先妻の子に遺留分が残ります。しかし社団に信託された長野の不動産は、長男が相続することはありませんので、先妻の子にいくことはありません。

<一般社団法人への信託の特徴>
今回のケースのように、信託の受託者は個人でも法人でもなることができます。家族の資産を長期的に財産管理することを検討している場合は、親族間で一般社団法人を立ち上げるのも一つの方法です。

一般社団法人を受託者にして、相続人の全員を理事におくことで、複数人による意思決定になりますから財産を公明正大に管理できるという利点があります。また、社員の資格を例えば「〇〇家の親族」などと規定することで、親族以外の第三者の関与を排除することができます。

ちなみに個人が受託者になった場合は、受託者が死亡した場合、新たな受託者を選任しなければなりません。もしも、受託者がかけたまま新受託者が決まらない状態が1年間継続した場合は、信託法により、信託が終了してしまうという心配がありますが、一般社団法人は社員2名がいればいいのです。社員の数が足りなくなる場合は、新たに社員を加入させれば可能です。

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この記事を書いた人

弁護士

一橋大学法学部卒。1985年に弁護士資格取得。現在は新麹町法律事務所のパートナー弁護士として、家族問題、認知症、相続問題など幅広い分野を担当。2015年12月からNPO終活支援センター千葉の理事として活動を始めるとともに「家族信託」についての案件を多数手がけている。

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