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【家族信託活用実例】内縁の妻に財産を残す――遺言状で起こる可能性がある “争い”を家族信託で円満に(2/2ページ)

谷口 亨谷口 亨

2019/11/19

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【相談の要点】
・自分が亡くなった後の内縁の妻の生活が心配。
・今の住まいに、そのまま住めるようにしてあげたい。
・できればお金も残してあげたい。

【提案】
・お子さん2人の了解を得た上で、大谷さん所有の自宅不動産を長女に信託し、信託財産の受益者を大谷さんと内縁の妻にする。

(信託内容)
「受益者が亡くなる、もしくは家を出て行くなどして信託が終了したら、長女と次女で半分ずつ分ける」

・預貯金は話し合い次第だが、長女に信託して、「信託財産である預貯金から毎月○万円ずつ生活費として受益者に渡す」など、金額を決めて渡す契約にする。または、2人の娘が「預貯金すべてを渡してもいい」という話になれば遺言を作成するなり、信託財産である預貯金の受託者を長女にした信託契約を結び、当初は大谷さんご本人を受益者に、大谷さん亡き後は、内縁の妻を受益者にする旨を設定する。


<提案のポイント>
1)なんといっても、最初に大谷さんの気持ちを、娘さんたちに理解してもらい納得してもらうことが必要です。大谷さんが預貯金もすべて、内縁の妻に渡したいと考えても、娘さんたちからするとそうした財産は前の奥さん(娘たちの母)と築いたものという考え方もあるかもしれません。娘さんたちの反発を招かないようにして、円満に承継するには話し合いしかありません。

2)内縁の配偶者に対して財産を残してあげたい場合は、遺言書を活用して遺贈する方法があります。ただし「内縁の配偶者にすべて遺贈をする」といった遺言書を残したとしても、法定相続人である二人の娘には遺留分がありますので、相続争いとなってしまう可能性があります。

3)内縁の妻の生活を守ってあげたいという気持ちをカタチにするためには、遺言では対処できない部分、内縁の妻の居住権の確保があるために、家族信託を設定しました。今回のケースは、前妻が亡くなっていますが、例えば離婚調停中や離婚訴訟中であった場合でも、配偶者として相続人となります。

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この記事を書いた人

弁護士

一橋大学法学部卒。1985年に弁護士資格取得。現在は新麹町法律事務所のパートナー弁護士として、家族問題、認知症、相続問題など幅広い分野を担当。2015年12月からNPO終活支援センター千葉の理事として活動を始めるとともに「家族信託」についての案件を多数手がけている。

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