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「家族信託」が注目される理由――何よりも “残す人”の思い、希望を優先できる(2/2ページ)

谷口 亨谷口 亨

2019/08/14

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遺言と家族信託の違いは?

遺言は、自分の死後、自分の財産の行き先や割合、分割方法を示したものです。民法で定められた法定相続分を、遺言によって変更できるということです。本人が亡くなった後に、遺言の内容に基づいて手続きが行われ、終了します。遺言書の存在をきちんと伝えておかないと発見してもらえないことも考えられます。本人が死亡する時まで効力が発生しないため、後継者には一抹の不安も残るかもしれません。

家族信託の場合は、契約をした時点で効力を発生させられます。親の財産を子どもへ信託すると、親の判断能力がなくなっても財産の管理・処分ができるため資産活用や相続税対策ができるということです。この点、遺言では、生前の財産管理には役に立ちません。

 

さらに大きな違いとして、通常の遺言は本人の次に財産を相続させる人しか指定できませんが、家族信託は二次相続以降、財産の受取人を指定することができるという点です。自分の直系血族以外に財産を流出させたくない場合などにも使うことができるのです。

ある方が「自分が死んだら財産を、とある財団法人に寄付したい」と考えたとします。今まででしたら一般的に遺言というカタチにしようと公証人のところ出向き、その思いを遺言書にしてもらい、実行を遺言執行者(遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人)等に託すことになります。これは家族信託でも可能です。

契約いうカタチにしますから、当然、信じられる人と契約するという安心感もありますし、生前であればいつでも書き換えや再作成も可能です。

家族信託は、委任契約、成年後見制度、遺言のすべての機能、さらに数次相続までをひとつの契約書によって、一本化できるのです。

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この記事を書いた人

弁護士

一橋大学法学部卒。1985年に弁護士資格取得。現在は新麹町法律事務所のパートナー弁護士として、家族問題、認知症、相続問題など幅広い分野を担当。2015年12月からNPO終活支援センター千葉の理事として活動を始めるとともに「家族信託」についての案件を多数手がけている。

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