「広大地評価」廃止で得をする人、損をする人(2/4ページ)
ウチコミ!タイムズ編集部
2018/06/12
そこで、平成16年にそうした作業を必要としない評価方式に改正されました。これまでの経緯を受けて改められた新広大地評価の計算式は「路線価×(0.6-0.05×土地面積/1000㎡)×土地面積」と非常にシンプルで、土地面積と路線価が同じならどんな形状の土地も同じ評価額となります。言い換えると、土地の個性が考慮されない、無理のある評価方法でもありました。
また計算式はシンプルになりましたが、そもそも適用要件が複雑でグレーゾーンが多く、広大地に該当するかどうかの見極めが難しいという問題は依然としてありました。減額効果の非常に高い規定であるだけに、実質的に管轄税務署によって適用可否の判断がブレてしまうことが問題視された面もあったのでしょう。新設された地積規模の大きな宅地の評価では、補正率の見直しとともに適用要件の明確化が図られています」
この地積規模の大きな宅地の評価が適用される要件とは何か。
1つは土地の大きさが三大都市圏なら500㎡以上、それ以外では1000㎡以上あるかどうか、もう1つは地区区分が「普通住宅地区」「普通商業・併用住宅地区」のいずれかに当てはまるかどうかといったものがある(いずれも路線価地域にある土地の場合)。こうした要件に該当すれば、20%から33%の減額割合を適用できる。
相続税が増えるケース、減るケース
では、今回の改正で相続税が増える人と下がる人との分かれ道はどこにあるのだろうか。
まずは増える場合――。
広大地評価では、評価する土地を宅地分譲したとして、その土地に開発道路など潰れ地が想定されることが必要だ。そのため、たとえば、整形地で、この条件を満たす土地には広大地評価を適用でき、大幅な減額を図ることが可能だった。しかし、地積規模の大きな宅地の評価は、適用は可能であるもののその減額割合が小さく、結果的に増額となることが予想される。
また、中小工場地区の土地は、住宅地への移行が予想される地域などは、広大地評価が適用できる場合があったが、地積規模の大きな宅地の評価では、対象となる地区区分に、そもそも中小工場地区が含まれていないため、大幅な増額となることが見込まれる。
一方、減額となる場合について、藤宮さんは次のように話す。
「たとえば、コンビニエンスストア、ファミリーレストランなど、幹線道路沿いに郊外型の大型店舗やマンション等が建ち並ぶ普通商業・併用住宅地区の土地は、これまで広大地評価の対象にならないことが多かったのですが、地積規模の大きな宅地の評価では対象になりえます。
また、いま言ったように、広大地評価では開発道路など、潰れ地を想定する必要があるため、角地や、いわゆるようかん切りの土地は、潰れ地が生じず、500㎡以上であっても、広大地評価を適用できないことが多々ありました。しかし、地積規模の大きな宅地の評価では、要件を満たせば、こうした土地であっても補正が入れられるようになり、評価額が下がることが考えられます。このような土地をお持ちの方は、評価の見直しを検討することをお勧めします」
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