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地価暴落危機!?

「生産緑地 2022年問題」にどう向き合うか(2/5ページ)

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その歴史は1969年の「都市計画法」の施行からはじまった。この法律によって、「市街化区域」「市街化調整区域」の区域区分制度が創設。そのうえで市街化区域内の農地は“宅地化すべきもの”と位置づけられた。以降、当時の住宅需要の高まりを背景として、行政は宅地並みの高い税金をかけることで都市農地の利用転換を図っていくが、一方で農地所有者や農業団体等の反対も根強く、農地保全と宅地化促進の調整の必要性から様々な制度の変遷を辿ることとなる。

74年には「生産緑地法」が制定され、市街化区域内農地に生産緑地地区が指定されることとなった。当時の生産緑地はその機能により第1種及び第2種に区分され、買取申出ができるまでの期間は第1種が10年、第2種が5年、指定面積の基準は第1種がおおむね1ヘクタール以上、第2種がおおむね0.2ヘクタール以上とされた。

82年には「長期営農継続農地制度」が導入された。この制度は、長期営農継続農地の認定を受けた農地について固定資産税等の宅地並み課税を猶予し、5年間営農を継続した場合にはこれを免除するというものだ。

そして、91年にいわゆる「新生産緑地法」(現行の生産緑地法)が施行。この改正により、市街化区域内農地は「保全すべき農地」と「宅地化すべき農地」に明確に線引きされた。生産緑地の第1種・第2種の区別は廃止され、その指定面積要件は500㎡、買取申出ができるまでの期間は指定後30年と設定。政府は都市農地所有者に対して、30年の営農継続と引き換えに生産緑地の指定を受けるか、利用転換できる代わりに宅地並み課税を受け入れるかの選択を迫ったのである。

15年3月末の国土交通省の資料によると、生産緑地の指定を受けている地区は全国で62,473地区、面積にすると13,442ヘクタールに上り、このうちのおよそ8割が1992年の制度開始時に指定を受けている。したがって2022年がその30年目にあたり、市町村への買取申出が急増することが予想される。実際は財政上の問題から買い取りに応じる市町村は少ないと見られ、解除された生産緑地の多くが宅地として不動産市場に売りに出される結果、供給過剰で地価が暴落するのではというのが、「生産緑地 2022年問題」なのである。周辺の宅地化が進めば既存の賃貸住宅の家賃に影響を及ぼすことになりかねない。しかも22年は東京五輪を終えた2年後で、五輪景気もおわって景気が踊り場になっていることも危惧され、そこに地価の下落が相まって不況に拍車がかかるのではないかと危機感が高まっている。

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