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フルローン、オーバーローンのリスクとは?

頭金ゼロで不動産投資を始めた人の末路(2/3ページ)

工藤 崇工藤 崇

2016/12/01

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頭金ゼロで不動産投資を始めるサラリーマン、公務員が増えている

不動産投資の場合、仮に返済が不能になった場合に備えて、購入物件に担保設定をします。借り入れが返済できなくなった場合には、借金のカタに物件を差し押さえますよということです。
フルローンやオーバーローンの場合は担保評価を最初から超過して借り入れしているため、返済の負担もそれだけ大きくなってしまいます。空室が発生して家賃収入が落ち込めば、返済を家賃収入だけで賄えなくなり、「自己資金の持ち出し」が発生します。

ここでいう「自己資金の持ち出し」とは、本来、不動産投資用に考えていなかった預貯金を返済に充てることです。もともと使う目的を決めていなかった余剰金であれば問題ありませんが、住宅費や子どもが育ったときのための教育費などを削ってしまえば、別途貯蓄を考えなければならないなどのマイナス要素が発生します。

それだけではありません。最悪の場合には、物件を売却してその代金を返済に充ててもローンが残ってしまうことさえあります。
もちろん、フルローン、オーバーローンでなくともそういったリスクはあるのですが、借り入れ金額が大きくなるフルローン、オーバーローンは、それだけ大きなリスクを抱えることになるのです。

不動産投資において、本来はとてもおすすめできないのが、このフルローンやオーバーローンです。
ところが最近、頭金ゼロで不動産投資を始めるサラリーマンや公務員が増えています。お金を借りることのできる理由はどこにあるのでしょうか。

自己資金ゼロでも貸してしまう金融機関の思惑

それは不動産投資が不動産「事業」であるためです。そのため、金融機関は「現在(不動産購入者に)どれくらいの返済力があるかではなく、これからどれだけの返済力を生むか」にかけるといわれています。
これは現時点の財務力を「てこ」(レバレッジ)にして、大きな額のお金を借り、事業拡大に繋げる会社経営者と金融機関の関係に近いともいわれます。この時に重要な指標として活用されるものが、「利回り」です。

まずは利回りの種類を確認しましょう。利回りには

・表面利回り
・実質利回り

のふたつがあります。

まず、表面利回りについてご説明します。表面利回りは、予想収益で物件購入費用を割り出して算出したものです。不動産の広告やチラシで利回りが表記されている場合は、この表面利回りが多いです。
表面利回りは、次の計算式で算出します。

表面利回り=年間収入÷購入価格

つまり、不動産投資として正確な数字をつかむならば、これら「諸費用」を込めた実質利回りの活用が必須です。

金融機関側としては、現在の財務力が低くとも、購入物件が利回りで10%以上予測できているならば(許容範囲は金融機関によって異なります)、この「将来性」に期待をしてフルローンやオーバーローンを貸し付ける、という手段を取ることができます。
また、不動産投資家のなかには何棟も投資物件を所有している人も多いです。それらの方は、これから購入する物件こそ担保評価が不足していても、ほかに所有している不動産の収益が担保となって金融機関の貸付許可を引き出すことが多いです。

また、上場会社の会社員や公務員は「安定」しています。何があるかわからない世の中、100%ではないにしろ、今後も安定して給与所得が入ってくる可能性が高いといえます。金融機関にとっては、万が一、貸し付けた不動産の収益性が疑われても、返済をしてもらえれば問題ありません。つまり、物件購入者に賃料以外の安定した収入があれば、「不動産の収益性=支払い余力」とは判断されないのです。
こうした人たちを「属性がいい」といいますが、その人たちには積極的にフルローンやオーバーローンで融資することができるのです。

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この記事を書いた人

株式会社FP-MYS代表取締役社長兼CEO

1982年北海道生まれ。北海学園大学法学部卒業後に上京し、資格試験予備校、不動産会社、建築会社を経て、2016年6月にFintechインキュベーション「FINOLAB」入居。翌月に株式会社FP-MYSを設立。 ファイナンシャルプランニング(FP)を通じて、Fintech領域のリテラシーを上げたいと考える個人、FP領域を活用して、Fintechビジネスを開始、発展させたいとする法人のアドバイザーやプロダクトの受注を請け負っている。執筆実績多数。

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