ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

書類のやりとりだけで丸儲け

不動産業者だけが得をする、中間省略登記の真実(2/2ページ)

尾嶋健信尾嶋健信

2016/03/02

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

水漏れ事故発生で、不動産業者を訴える裁判に

しかし、物事はそんなにうまく運びませんでした。なんと、そのマンションで水漏れ事故が発生したのです。築年数が古いため、水道管があちこちで劣化していたのが原因でした。悲惨だったのは、せっかくリフォームした5室のうちの4室が、水漏れ被害に遭ってしまったこと。張り替えたばかりの床もクロスも、すべて台無しです。

日頃温厚なZさんも、この水漏れにはさすがに激怒しました。「こんな欠陥マンションを売りつけたんだから、水漏れの損害を弁償してくれ!」とY不動産に詰め寄りました。が、Y不動産はのらりくらりとZさんの言い分をはぐらかし、いっこうに弁償しようとしません。そこでZさんはついに、Y不動産を相手に、瑕疵担保責任を問う民事訴訟を起こしたのです。

「瑕疵担保責任」とは、物や不動産の売買契約で、売却されたものに通常の注意では発見できない欠陥があった場合、売り主がその損害を賠償しなければならない責任のこと。Y不動産は、水道管がボロボロのマンションをZさんに売りつけたのですから、Zさんの被った損害を賠償し、かつ水道管の欠陥を補修する責任があります。

裁判では、驚くべき事実が明らかになりました。なんとY不動産は、静岡県にあるそのマンションを一度も見ていないのです。売り主である地主のXさんから、当初4500万円の売値で出ていたマンションを「誰も買い手がつかないから」と1000万円値切って3500万円で購入し、そこに2000万円の利益を乗せて、右から左という書類のやりとりだけで、Zさんに5500万円で売りつけていたのです。

結局、売り主であるXさんは4500万円の物件を3500万円で買い叩かれ、買い主であるZさんは2000万円も高く買わされていたのでした。このように、情報弱者がバカを見るのが、不動産投資のリアルな世界なのです。

ちなみに、Zさんの民事訴訟は現在も係争中です。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

満室経営株式会社 代表取締役

1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。

ページのトップへ

ウチコミ!