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AD(広告料)に頼らない関係をいかにつくるか

営業マンを味方にして、自分の物件に優先的に客付けしてもらう方法

尾嶋健信尾嶋健信

2016/08/17

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まずは営業マンに自分の物件を覚えてもらう

前回は、「不動産仲介の営業マンがどのように内見ルートを決めているか」を解説しました( http://sumai-u.com/?p=6299 )。

簡単におさらいしておくと、まず、(1)魅力のない「当て物件」に内見者を案内してがっかりしてもらい、(2)次にそこそこ魅力的な「中物件」を見せて、「想定した賃料でもいい部屋があるかもしれない…」と希望を抱かせ、(3)最後に魅力的な「決め物件」を見せて賃貸契約を勝ち取る、というものでした。

そこで、賃貸物件のオーナーが考えるべきは、「いかに自分の所有する部屋を決め物件に設定してもらうか」ということです。

不動産仲介の営業マンは、内見のお客さんを案内するとき、最後の落としどころである「決め物件」を最初から決めています。そして、「決め物件」がいかにも魅力的に見えるように、中物件と当て物件を逆算で決めていくわけです。

つまり、オーナーとしては、自分の物件をまずは営業マンに覚えてもらわなければなりません。

入居者が部屋を選ぶ決め手とは?

では、自分の物件を営業マンに覚えてもらい、しかも決め物件に選んでもらうにはどうすればいいのでしょうか。

本論に入る前に、「一般的な借家人が入居する物件をどのように決めているか」からお話ししておきましょう。

意外に思われるかもしれませんが、ほとんどの人が、実は感覚的に決めています。

もちろん、専有面積、陽当たり、収納の多さなど、その人なりに譲れないポイントはあるものの、それらの満たすべき条件をある程度満たしていれば、あとは「何となくよさそうだから」「営業マンがここまで頑張ってくれたから」など、自分でも説明できない理由で決めている場合がほとんどなのです。

言い換えれば、ある賃貸物件を契約するかどうかは、担当する営業マンとの関係性に大きく関わっているのです。つまり、賃貸物件のオーナーからすれば、営業マンとの関係性がきわめて大事だといえます。

ADを払えば手取り早いがおすすめはできない

営業マンとの関係性をつくる、いちばん手っ取り早い方法は、契約成約時に広告費を支払うこと。広告費とは、通常の仲介手数料に加算して管理会社またはオーナーから支払われる、臨時ボーナスのようなもので、不動産業界では「AD」と呼んでいます。

たとえば、賃料5万円の賃貸物件の間取り図に「AD2カ月」と書かれていれば、この物件を成約させた営業マンには、通常の仲介手数料1カ月分である5万円に2カ月分10万円が加算され、合計15万円が支払われます。

営業マンからすれば当然、ADつき物件のほうがモチベーションは上がるし、記憶にも残りやすくなります。決め物件に選ばれやすくもなるでしょう。

ただし、ADはいちばん手っ取り早い方法であるとはいえ、仲介手数料に上乗せして払う、いわばグレーなお金です。仮に家賃2カ月分のADを払えば、2カ月分の家賃をもらわずに部屋を貸しているのと同じことになってしまいます。できるだけADに頼ることはさけるべきでしょう。

理想はADに頼らない関係づくり

それに、ADさえつければ決め物件に設定される、というものでもありません。営業マンからすれば、ADつきのおいしい物件であっても、肝心の部屋は狭かったりボロかったりすれば、内見者は契約してくれないからです。

もちろん、そうした物件でもADをほかより多く支払えば、優先的に客付けしてくれる営業マンはいるはずです。ですが、それでは賃貸経営の収支が圧迫されるばかりですし、ほかの物件と競争になれば、ADの額はどんどん吊り上がっていくでしょう。

理想は、ADに頼らずに営業マンと有効的な関係をつくることです。とはいえ、本当にそんなことができるのでしょうか。そのためには、私は地道なマーケティング活動しかないと思っています。

次回は、営業マンとの関係の結び方について、具体的にご説明しましょう。

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この記事を書いた人

満室経営株式会社 代表取締役

1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。

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