ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

事故物件の「告知」について国交省が案を発表 賃貸の3年は長いか短いか(2/2ページ)

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

事故物件…どこまで申告する必要があるのか

次に、「告げるべき事案」の範囲を見てみたい。

「他殺」「自死(自殺)」「事故死」「原因が明らかでない死」が原則として借主にこれを告げる対象となっている。一方、老衰、病死など、いわゆる「自然死」は原則対象とされていない。

なおかつ、事故死についても、階段からの転落や、入浴中の転倒といった、日常生活のなかで生じた不慮の事故によるものに関しては、やはり「原則としてこれを告げる必要はない」とされている。

そのうえで、自然死や不慮の事故死であっても、「長期にわたって遺体が放置されたことなどにより、室内外に臭気・害虫等が発生し、いわゆる特殊清掃等が行われた場合」においては、話が別となる。これらは、原則告げるべき事案、すなわち告知の対象となるかたちだ。

以上、告知対象の事案別の切り分けについては、多くの立場で、納得しやすい提案がされているといえるのではないか。

加えて現状、賃貸住宅の入居者におけるあらゆるかたちの死について、これを一律に告知の対象にすべきとする一部の考え方が、単身高齢者の入居機会を狭める方向に波及しているとされる問題についても、上記は、それに対する処方箋のひとつになりうるものといえるだろう。

報告義務は3年…これは短い? それとも長い?

次に、ここは今回一番のポイントといえるかもしれない部分だ。

よく話題となる、「事故物件であることの告知をいつまで続ければよいか」について、本案は、具体的な年数を挙げての提案をやや踏み込んだかたちで行っている。その年数とは「概ね3年」だ。

■告げるべき事案が発生している場合
■これを認識している宅地建物取引業者は
■事案の発生から概ね3年間は、借主に対してこれを告げるものとする

と、なっている。なお、どこが踏み込んだ部分かといえば、それは、事案発生後の入居者の入れ替わりの実績をここでは排除している点にある。

時折ウワサされるところの、事故物件に短期間だけ人を頼んで住まわせ、当該人物に早期退去してもらったのちに告知をやめるような「作戦」を選べなくさせる意図が、ここには多少感じられるところだ。

ただし、一方で3年という期間は、一般目線からは短いと感じられる可能性も高いだろう。そこで人が自殺したり、殺されたりしたのならば、4年、5年、あるいは将来限りない期間にわたって告知してほしいと感じる入居希望者も、世の中には少なくないのに違いない。

しかしながら現状として、そうしたニーズに対しては、不完全ながら半ばインフラ化したツールとしての「事故物件サイト」もすでに存在する。

そうした“民間努力”も見据えたうえでの3年であり、さらには、貸主と管理・仲介会社が現状背負う、重い肩の荷を下ろしてやるための3年ということであれば、この数字は、まずまず妥当なものといえるのではないだろうか。

以上、今回の国交省のリリースの概要については下記リンク先にて確認されたい。「案」本体を直接ご覧いただくには、前掲のリンク先の方が便利だろう。

国交省 宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)に関するパブリックコメント(意見公募)を開始します

なお、今回の「案」にもとづき、実際にガイドラインが成立した場合でも、これに強制力があるわけではない。

しかしながら紛争時など、宅建業者に対し行政庁が監督・指導を行うにあたっては、(成立後の)本ガイドラインの内容が考慮されることとなる。民間のみでは長年コンセンサスをつくれずにいた案件について、行政がそれを一旦固めるという意味において、今回の国交省の仕事は、世の中が渇望していたものといっていいだろう。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン『ウチコミ!タイムズ』では住まいに関する素朴な疑問点や問題点、賃貸経営お役立ち情報や不動産市況、業界情報などを発信。さらには土地や空間にまつわるアカデミックなコンテンツも。また、エンタメ、カルチャー、グルメ、ライフスタイル情報も紹介していきます。

ページのトップへ

ウチコミ!