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車が入らない、市街化調整区域…マッチングで売れない不動産を売る

田中 裕治田中 裕治

2020/04/19

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車の入らない土地の売却の初歩

売れない家にはさまざまな理由があります。その1つが車の入れない立地の物件です。

たとえば、駅近くで敷地面積が狭いため、進入路が狭い、あるいは傾斜地に家があるため家の前が階段になっている家などです。こうした条件の物件をお持ちの方のなかには、車が入れないから売れないと思い込んでいる方もいらっしゃいます。
たしかに、こうした条件の家、なかでも車が生活の足になっているところでは、条件的に厳しい部分もあります。しかし、ものは考えようでゼッタイに売れないかというと、そんなことはありません。

当たり前のことですが、まずは車を必要としない人に売れればよいわけですが、車を持っている、これから買おうとしている人であっても売る方法はあります。

一番簡単な方法は、あらかじめ家の近所の月極駐車場と契約をしておき、それとセットで販売する方法です。ほかにも家の前が階段になっている物件では、階段をスロープにかえる工事を行うことで問題を解消することができます。ただし、こうしたケースでは傾斜角度がどのくらいあるか、また、公道であれば行政の許可が必要になります。

さらに重要なことは売る相手を考え直すことで、売れなかった物件が売れるようになることです。

そんな実例をご紹介しましょう。

【実例紹介 1】敷地が傾斜地で、家の前が階段となっている車の入らない物件の売却(神奈川県横浜市)

ご相談をいただいた物件は、80坪の土地に築50年以上の古い家がある物件で、家の前が階段のため車が入らない物件でした。

購入をしていただいても、そこに住むにはリフォームが必要です。また、土地が広いのはいいのですが、建て替えをする際は車が入らないため解体費用や建築費が通常よりも高くなることが予想されました。仮にこの土地に新築物件を建てたとすると、土地代が3000万円、古い建物の解体費と、新しく建てる建築費用は2500万円かかると見積もられ、合計で5800万円ほどが必要になります。

しかし、幸いにもこの物件は駅から徒歩5分と好立地。そこでアパートであれば車が入らなくても問題なく、好立地に需要があると考え、売却先をアパート建設業者に絞りました。結果的に、いくつかからのアパート建設業者からの引き合いがあり、そのなかで一番高い値段を提示してくれたアパート建設業者の3000万円で売却することができました。

【実例紹介 2】市街化調整区域の建物が建てられない、車が入らない土地の処分(埼玉県白岡市)

ご相談内容は、「現状ではまったく使っていない固定資産税だけを支払い続けている土地をなんとか処分してほしい」というご依頼でした。

お話をうかがうと地元の不動産会社に売却の依頼をされ3年経ってもまったく売却先が見つからないとのことでした。

現地調査と物件調査を行ったところ、市街化調整区域で道路との接道幅も1.5mと狭く、建物の建築ができないことが判明。また、第三者が利用する水道管が土地を地中で横断していました。さらに一部境界標が不明で、隣には今にも倒壊しそうな空き家があり、景観を損ねていました。

物件は、もともと隣地より分筆されていたため、その隣地の方に購入の意向がないかもヒアリングしましたが、取得のご意向はありませんでした。

一般に売り出しはしましたが、問い合わせはほとんどなく、あっても建物が建築できる土地だと勘違いされた方で、話はまとまりませんでした。そこで売却先を近隣の方々に絞ってアプローチ。そのうちの1組の方より家庭菜園用地として購入したいとのお申し出をいただき、売却することができました。

今回の案件のポイントは、「誰に売却を任せるか」です。地元不動産会社で売り出した際には3年以上たっても売れなかった物件を当社では1カ月で売却することができました。どんな不動産にも売り方があります。特に地方物件の売却にはノウハウが必要です。

相場がないところに相場をつくる――不動産の売却には、そんな方法もあるのです。

「売れない不動産はない〜負動産を富動産に変える〜」田中裕治氏のコラム一覧
第1回   どうしても売れない不動産をどう売るか
第2回   「苦しい物件」を早く処分するために必要なこと
第3回   狭小住宅や築古物件、売却しようとしたらトラブル発覚 注意したいポイント
第4回   車が入らない、市街化調整区域…マッチングで売れない不動産を売る
第5回   売却しやすい農地、売却しにくい農地――農地の相続・売却は早め早めの対応で
第6回   共有名義の自分の持分だけの売却――いったいいくらで売れるのか?
第7回   「事故物件」は売れるのか? 事故物件を売るために必要な取り組みと事前対策ポイントとは
第8回   共有名義の「農地」の売却――売るための準備と超えるべきハードル
第9回   別荘の売却――コロナ後の「新しい生活様式」で人気が高まる別荘の見切りの付け方
第10回 使えない、建て替えできない……市街化調整区域の「分家住宅」の対処法
第11回 底地と借地の売却で重要なのはタイミング
第12回 農地転用で市街化調整区域の農地の売買を可能にする 

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この記事を書いた人

一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事、株式会社リライト代表取締役

1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で不動産会社を設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。著書に『売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ』『本当はいらない不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』などがある。

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