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BOOK Review――この1冊 『賢い子はスマホで何をしているのか』

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『賢い子はスマホで何をしているのか』 石戸奈々子 著/日経BP社 刊/本体990円(税込)

この数年、スマートフォンをはじめとするデジタルデバイスの過度な使用は心身の健康にリスクをもたらすという警告が、医師や脳科学者らから発されている。

実際、2017年には、日本医師会と日本小児科医会が「スマホを使うほど学力が下がります」などと、スマートフォンの過度な使用を警告するポスターを作製。家庭や教育現場に衝撃を与えた。

スマートフォンやタブレットなどを子どもに与えることを「悪」とする言説が目立つ一方で、社会のデジタル化は進む。デジタルツールを使いこなす技術や、基礎的なデジタル知識なくして次世代を生き残れないことは明白だ。学齢期の子どもをもつ親たちの悩みは深い。

本書はそんな現状を憂い、「ちょっと待って。スマホは『善』か『悪』かの二元論って、変じゃないですか?」と問題提起する一冊である。

スマートフォンに子育てを丸投げすることには、著者も反対している。ただ、リスクはもちろん、学びの可能性を広げるツールとしての可能性もしっかり把握して、うまく使いこなす工夫をすることの方がよほど重要だし、何より子どものためになる――それが著者の主張だ。

著者は、プログラミングワークショップの開催などを通じ、子どもに創造的な学びの場を提供するNPO法人「CANVAS」の理事長、石戸奈々子氏。IT教育に関する政府の委員などを歴任し、義務教育におけるプログラミング教育の必修化が決定される以前から、デジタル教育の重要性を国や教育現場に訴えてきた。日本のデジタル教育の旗振り役の一人であり、なおかつ一児の母親でもある。

デジタル教育についての書籍は数多くあるが、現場の目線と母親の目線の両方をもつ著者が書いた本は、そんなに多くない。その意味でも貴重な一冊だ。

「プログラミング教育」で学ぶこととは何か?

そもそも、プログラミング教育では何を学ぶのか。

文部科学省によれば、「子どもたちに、コンピュータに意図した処理を行うように指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての『プログラミング的思考』などを育成するもの」という。かいつまんでいえば、プログラミング的思考とは、自分が意図する一連の活動を実現するために必要な論理的な思考だ。

例えば著者が行うワークショップでは、子どもでも簡単に操作できるプログラミング言語を活用。ある時には、猫のキャラクターの行動を、実際に子どもにプログラミングさせてみる。

猫を歩かせるのか、歌を歌わせるのか、ジャンプさせるのか。子どもが自由に決めて、プログラミングしてよい。子どもはプログラミングを通じ、デジタルの世界で自分のアイデアが具現化する様子を目の当たりにして、喜ぶ。この喜び、楽しさが、子どもの創造性や表現力を刺激し、主体的に学ぶ意欲を引き出す。

デジタル社会を生き抜くうえでは、プログラミングを学ぶこと自体に、とても重要な意味がある。加えて著者は、プログラミング教育を通じ、創造力や表現力を学ぶことも重視する。これからの子どもたちは、一人ひとりが、AIにとって代わられない能力を身に付けなければならない。だからこそ、創造性や表現力を磨くことの重要性が増す。

著者がデジタル教育を推進する土台には、こうした思いがある。

デジタルツールとの付き合い方の最適解に唯一の正解はなく、子どもの性格や志向性などによって、さまざまに変わる。デジタルを避けて生きられない社会である以上、「ちょうど良いところ」を探りながら、自分にとっての最適解を見つけるしかないのだ。子どもの将来を見据え、子どもと共に学び続けようとする著者の言葉からは、学べることがたくさんある。

BOOK Review――この1冊
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この記事を書いた人

ウチコミ!タイムズ「BOOK Review――この1冊」担当編集

ウチコミ!タイムズ 編集部員が「これは!」という本をピックアップ。住まいや不動産に関する本はもちろんのこと、話題の書籍やマニアックなものまで、あらゆるジャンルの本を紹介していきます。今日も、そして明日も、きっといい本に出合えますように。

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