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BOOK Review――この1冊 『相続したボロ物件どうする? 賃貸アパート経営の道しるべ』

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文/向園 智子

渡邊浩滋 著/税務経理協会 刊/定価 2090円(税込)

著者は大家さん、そして大家さん専門税理士でもある渡邊浩滋氏。そんな著者のもとへ最近増えてきた相談事があるという。それは「老朽化した不動産を相続したが、どうしたらいいか困っている」という内容だ。相続する不動産は、賃貸物件もあれば、自宅もあるだろう。しかし相続した後の使い道は、相続人が決めることである。本書では相続した不動産にはどんな選択肢があるかをフローチャートで分かりやすく解説。選択肢ごとにその先に何があるのか、何に注意しなければならないのかが示されているため、必要な対策を講じることができる。

そこで何よりも重要なのは、建物の現状を知ることだ。

・立地状況
・管理状況
・入居状況
・借入れ状況
・財産状況
・所得状況

これらのポイントを押さえることで建物の現状を把握し、何が課題なのかを明確にすることが必要だという。課題が明確になれば、その物件を「持ち続ける」か「売却する」かという方向を決める材料になる。しかし、現状分析で問題がなく、賃貸にする場合でも「事業継続の覚悟」を持てない場合はおすすめできないと、著者はいう。今後、賃貸経営というビジネスは、今以上に厳しくなっていくことが目に見えているからだ。

辛いとき、苦しいときに他人や環境のせいにする人がいる。「立地がよくないから」「隣に新築が建ったから」「管理会社が動いてくれないから」など、愚痴を言ったところで、何も変わらない。経営者はどんな状況であっても問題点を自分に向けて探り、解決策を自ら導かなければならない。そういった覚悟が今後厳しくなる賃貸経営には必要だと著者は説いている。

著者がここまで“覚悟”にこだわる理由はなんなのだろうか。

それは大家業が「不労所得」ではないからだ。管理会社に丸投げでも家賃が入ってきていた時代はすでに終わった。大事なことは経営者意識と行動力のみと力説する著者。大家として経験してきた数々の「痛い目」にあわないでほしいという願いも感じられる。

さらに第2章では、著者の考える「賃貸経営のビジネスモデル」が書かれている。今後の大家さんは「勝ち組」「負け組」の二極化される、勝ち組になるための覚悟はありますか?と著者からの問いかけだ。

ここまで読み覚悟を持てた方は、ぜひその先を読み進めてほしい。

第3章からは、「持ち続ける」か「売却」かを選択し、そのどちらに対しても進めるべき指針を分かりやすく解説されている。

例えば、持ち続ける場合は建て替えの必要性があるのかや、売却する場合、高く売却するコツやタイミングなど。そして、著者が税理士であるからこその、“税”にかかわる内容はとても分かりやすい。第7章では、今後、子どもに相続させることを考えている大家に向けた、「生前にしておくべき相続対策」としてまとめられている。

賃貸経営は大きな決断の連続である。現状を分析して、課題を見つけ、経営改善していかなくてはならない。たとえ築が古くても、立地が悪くても、空き室だらけでも、工夫次第で経営改善していけると本書では書かれている。

そして、社会問題となっている“空き家問題”。総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」によると、2018年時点で空き家の数は846万戸にもなるという。そして、全体の約半数(431万戸)は賃貸物件だというのだ。今後の厳しい賃貸経営を想像させる数字である。

本書冒頭に「私は賃貸経営の未来を語れる同士を求めています」と書き記している。厳しい状況のなかでも、真剣に賃貸経営に立ち向かう大家が増えることを著者も願っているのだ。物件を相続した人だけでなく、現在賃貸住宅を所有している大家にとっても参考になる構成となっているのはそのためだろう。例えば「なんとなく賃貸経営をしているけど、これから先が不安だ」「子どもへ賃貸経営を引き継ぎたい」と考える人にとって、本書はその道しるべとなり得る。

BOOK Review――この1冊
■『教養としての「地政学」入門』
『ハーバード式不動産投資術』
『安いニッポン「価格」が示す停滞』
『お気の毒な弁護士』 最高裁判所でも貫いたマチ弁のスキルとマインド
『不動産投資歴60年!  90歳女性現役大家の儲かる不動産投資術と物件管理の極意』

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この記事を書いた人

ウチコミ!タイムズ「BOOK Review――この1冊」担当編集

ウチコミ!タイムズ 編集部員が「これは!」という本をピックアップ。住まいや不動産に関する本はもちろんのこと、話題の書籍やマニアックなものまで、あらゆるジャンルの本を紹介していきます。今日も、そして明日も、きっといい本に出合えますように。

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